980625


校区役員会で話題に
校長たちからも批判の声

映画「プライド」――おどろおどろしい

山岡 陽介


いま、全国の映画館で、A級戦犯の東条英機を「英雄」にまつりあげ、侵略戦争を「正義の戦争」と賛美する反動的な映画「プライド―運命の瞬間(とき)」が上映されています。

この映画が藤岡信勝など「自由主義史観」を標榜する連中によって、巧妙に準備されてきた事実は労働新聞にも暴露されていますが、若い世代をはじめ、ごく一般の人びとの中には関心度の問題もあり、この流れが危険な意味を持つことが十分に暴露されているとはいい難い実際があります。

最近いくつか立ち寄った本屋の店頭ではどこでも、歴史的事実を記述する出版物を「自虐史観」と批判し、「自由主義史観」を展開する藤岡らの出版物がかなりの数並べられています。

私はここ数年、PTAの役員を経験したことから、地域の健全育成会の役員を引き受けています。

学校と子供、教師、父母、教育現場と家庭、地域のかかわりが密接な中で、いじめや不登校など、現在の教育現場が抱える多くの問題、また、世相を反映し、子供が痴漢行為にあう被害などが最近特に目立ちます。

以前、日の丸の掲揚の問題が話にのぼりました。私の地域では、子供の小学、中学の入・卒業式で、日の丸の掲揚や「君が代」が歌われたことは一度もありません。ほぼ子供主体の式になっています。労働組合の闘いの結果として、私が学校にかかわって十五年ぐらい続いています。

地域的には公明党の支持層が多いように思いますが、地域の会合に出ると、「日の丸や君が代が歌われないのはおかしい」「日教組のせいだよ」などとぶつ親父もいますが、大きな問題になることはありませんでした。

そんな中、最近校区の役員会の中で、「プライド」が話題にあがりました。役員の年齢層はほぼ二十代から四十代手前のお母さん、それに学校長など五十代、それに数名の六十代という内訳です。

私はどんな話になるか興味深くやりとりを聞いていましたが、その話の中では、映画を実際に見にいった人は一人もいませんでした。そして、ある役員が「東条英機をこの時期に題材にして映画をつくるというのは何か意図的なものを感じる。おどろおどろしい感じがする」と発言すると、学校長ら数人から「自分たちが教えてきた歴史とは違うし、こういう形で事実を歪曲(わいきょく)するようなことはあってはならない」など意見があいつぎました。

私も映画制作の背景などを若干発言し、その場の雰囲気は「おかしい」という結論でまとまったように思います。

当然、映画自身を知らない人もいましたが、「プライド」上映がどういう狙いで興行されているか、その場に参加した人にとっては初めて聞く話でしょうが、効果があったように思いました。

いま、正しい歴史認識をゆがめる動きは、かつてなく巧妙なやり口で日常的に反動の側によって進められています。知らない世代は、それに触れれば一定の影響を受けることも事実です。

どのように反撃するか。これは心ある人びとの共通の関心事であり、ちょっとした私の身近な経験ですが、こういう場面で反撃していくことがものすごく大切だと感じています。


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