980625


いつまで営業できるか不安
長引く不況で廃業あいつぐ

夜中の内職で経費を削減

通信機器卸売業 大塚 俊介


 私は自営で通信用機器の卸売業を営んでいます。長引く景気の低迷は、私の業界にも深刻な影響をおよぼしています。

 製造メーカーは、海外の工場で製品をつくり国内へ持ち込んでいましたが、昨年の秋口あたりから海外生産を止めています。急な円安で、海外生産のメリットがないからでしょうか。

 皆さんもラジオやカセットテープのなどの価格が安くなっていると思われるでしょうが、私の扱う商品も海外生産のおかげで同じ性能の品が安く販売できるようになっていました。

 このところ製造メーカーは海外生産の品物を廃番にして国内製造の新しい商品を供給していますが、一度下げた価格は消費の落ち込みもあって、上げることができず、利益を削って製品を出荷しています。

 それでもメーカーは売り上げが上がらず経営を続けていくのが困難のようで、大手の四社のうち二社の合併が六月の初めに発表され、他の一社も近年のうちに通信機の部門から撤退すると聞いています。

 合併する会社の営業マンに聞いたところ、現在いる百人の営業マンは一度退社して、三十人だけが新しい会社に入れるそうです。今から新しい仕事につくのは難しいが、仕方ないとあきらめていました。

 卸売業者も市場の競争がありますので、結局自分の利益を少なくして、小売店に他の業者より安く商品を供給しないと買ってもらえません。

 経費の節減はやっていますし、夜も二時、三時まで内職仕事をやりながら価格を上げずに少しでも利益がでるようにと努力しています。これから先、いつまで続けられるかわかりません。

 小売店を三、四店舗持っていた業者が支店を閉めるという話は何軒もあり、また廃業を考えているという話もよく聞くようになりました。そういえば、車で走っているとシャッターが降りて「貸店舗」「貸事務所」という看板がでているのをよく見るようになったと思いませんか。

 従業員さんに退職してもらうという話もたびたび聞くようになり、次の就職のことを考えると不憫(ふびん)に思うのですが、かといって取引先の経営が困難になるのも困ります。やはり不況の打開策を打たないと、どうしようもないという現状です。

 銀行の貸し渋りがひどい話もよく聞きます。ある業者さんは「商工会や自治体に相談に行っても、本当に困っているところには冷たい。けんもほろろに追い返された」と言っていました。金融機関のことは改めてレポートできるように、話を聞いておきます。

 私もいつまで仕事を続けられるか、不安をかかえながらがんばっています。


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