980605


昼夜ぶっ通しも当たり前
日給1万円にはウラあり

ガードマンもつらいよ

警備員 宇都井 健一


 朝あるいは夕方、スポーツ選手でもないのに、電車の中で大きなスポーツバッグを持っている人を見かけることがある。彼らは一体、何者なのか。

 以前から不思議に思っていたことだが、自分で経験してやっとわかった。彼らはガードマンなのだ。

 「日勤午前八時〜午後五時、日給九千円以上。夜勤午後八時〜午前五時、日給一万円以上。研修四日(昼食付き)、研修手当二万円」といったところがガードマン募集の平均的な内容。けっこういい条件じゃないか、と思う人がいるかも知れないが、甘い。これにはちゃんとウラがあるのだ。

 日給は月にある日数以上勤務した場合の額で、それ以下だと大幅に少なくなる。研修手当もすぐ支払われるわけではない。研修途中で辞めれば手当はゼロ、社会保険は完全不備、さらに制服や安全靴、ヘルメット、誘導灯(通称ニンジン棒)などの装備品の預かり金が否応なく給料から差っ引かれるのだ。

 私が勤務するS警備会社の場合、夜勤の日給は月二十三回以上勤務してやっと一万円で、それ以下だと九千円。研修費(四日二万円)は十五勤務後に一万円、三十勤務後に残りが支払われる。そして給料から差っ引かれる制服や装備品の預かり金は二万円だった。

 つまり、最低でも三十日はみっちり絞り取らせてもらうぞ、という魂胆(こんたん)が見え見えの仕組みなのだ。一週間か十日我慢して働いたら辞めようなどという考えは甘い、そう思い知らされる仕組みでもある。

 警備会社は全国に約八千四百社、警備員(ガードマン)は三十七万人強。東京都内には千六百五十社、約二万五千人のガードマンがいるといわれる。

 ガードマンの仕事は、警備業法によって第一号業務から第五号業務に分かれている。

 第一号業務は主にビルなどの施設警備、第二号は交通誘導、第三号は現金・絵画などの輸送警備、第四は対人警備、そして第五号は機械警備で、人数では全体の約七割が第二号業務となっている。私がやっているのもこれだ。

 警官上がりの講師による事務的かつ退屈な研修を終えて、ある地下鉄駅の建設現場で初めての勤務(夜勤)についたのは四月上旬のこと。

 午後八時から三度の休憩をはさんで、二〜三時間の残業のため午前八時まで、道路脇に設けられた歩行者用道路の出入口で歩行者誘導をした。といっても、ほとんどただ突っ立っているだけ。

 おまけに当夜はめちゃくちゃ寒い風が吹いていた。人間は寒さの中でじっと立っていると自然に足踏みするようになるということ、また、どう抑えようとしても止まらない胴ぶるいがあるということも実感した。私は体力には少し自信があったが、これはつらかった。本当につらかった。

 ところが、そんなキツイ勤務でも一週八勤も九勤もやる人がいる。つまり、万一ケガをしても(現場では道路に出てダンプなどの建設車両を誘導することもある)何の補償もないのに、週二日か三日、昼夜ぶっ通しで勤務しているわけだ。

 それとなく聞いてみると、本人が希望する場合もあるが、会社に言われてそうしているらしいのだ。これは完全に労基法違反ではないのか。

 労働組合を作ろうという雰囲気はいまのところまったくないが、いつか闘いを始めなければならない。そう考えている。


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