980605


なんて安いんだ俺の給料!

希望持てる社会つくろう

電機工場労働者 野島 武史


 きょうは給料日。予想はしていたがやっぱり安い。手取り十八万五千円也。先月の残業は一時間しかなかったのでひびいた。あまりの安さに、いったい俺の給料はどうなっているのかと、過去の明細書をひっぱり出して調べてみた。 

 三十七歳で今の会社に転職して七年。電機メーカーの下請け会社での三交替勤務をしている。入社当時は景気もよい頃だったが、すぐに不景気になり、三〜四年で仕事は忙しくなったが、去年から今年にかけてまた不景気になった。

 基本給は上がってはきたが、ここ数年の年収の頭打ち状況はどうだ。残業が減れば、基本給が上がっても同じということか。今年は、このままでいけば去年よりもずっと残業は少なくなるだろう。

 給料が上がらないだけでなく、職場の状況も大変だ。親会社も赤字で、設備投資を半分にしたり、不採算部門を閉鎖している。その下請けの会社としては「必死の努力・協力」をしていくしかないということだろうが、働く者はつらい。

 納期はますます厳しくなるし、仕事上のミスも許されない。より少ない人数でやりくりするために、いくつもの仕事を覚えなければならない。年配の人の中には変化についていけない人もいる。

 最近よく思うことは、自分ではそれなりに真面目に働いているのだが、働けば働くほど自分の首をしめているのではないかということ。ほどほどに働くのが最上の道ではないだろうか。

 そういえばサラリーマン川柳に、「遅れず、休まず、仕事せず」というのがあった。仕事をするために生きているのか、生きるために仕事をしているのか、何かむなしい。

 みんなは何を楽しみで生きているのだろうか。職場の雰囲気をひとことでいえば「やり場のない思い」「八方ふさがり」といったところだ。労働組合もなければ、不満をぶつける場もない。以前は仕事上のことで、上司に文句を言っていた人も最近は元気がなくなった。 

 外に目を向けてもいいことは少ない。殺人、強盗、自殺、いじめ、失業、不景気、汚職、カード破産…。この世の中はいったいどうなるのかと誰もが思っていることだろう。

 こんな状況だから、事件が起きると何かしら胸がさわぐ気がする。インドネシアの騒ぎもそうだし、インドやパキスタンの核実験もそうだった。核兵器や戦争に賛成するわけではないが、制裁を覚悟で自分のやりたいことをやる姿に、心がウキウキしてくる。

 いずれにしろ、希望が必要だ。本当の希望が。働く者が自分自身をとりもどすには社会を変えるしかない。これは極論ではないと思うが、どうだろうか。


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