980515


経営者こそ質を向上しろ

施設の私物化ねらう理事長

当局の攻撃に闘志燃やす

福祉施設労働者 市村 清志


 私の職場は、数十年の歴史ある福祉施設です。私も勤続二十二年を迎え、退職まで残り少ない限られた日々を仕事も組合活動も精いっぱいがんばっています。いや、最近はがんばらざるを得ない当局のやり方に闘志を燃やしています。

 ふりかえってみると、労働組合で何となくずっと闘ってきたように思います。他の労働組合では体験できないような闘いのなかで、いくつもの成果を上げてきました。労働者根性もでき、団結心もつちかわれてきました。

 しかし、組合員も定年退職や管理職へ昇格する人などによって、今では職員の過半数を割るほどに減っています。

 そんななかで今年も春闘を闘い、それなりの回答を引きだしました。ところが施設側は、春闘の最中に四月の人事異動を一方的に押しつけるという、腹立しいやり方を強行してきました。これに対して、団体交渉を繰り返していますが、憤まんやる方ない思いです。

 二十年ほど前に組合つぶしの手段として施設閉鎖や組合員の首切り攻撃がやられ、これらに反対する闘いなどを経験しました。その時は長い間、職場の前には赤旗が立ちならび、世間を騒がせるような闘争に発展しましたが、最近は、それを思い出させるような状況です。

 当時の理事長が最近また理事長になったことにより、明らかに施設の私物化を狙ったやり方があちこちに見受けられてきたからです。職員採用や人事異動もすべて理事長の一声で決められたとわかるような不平等な採用、不平等な異動など、心底悔しい思いをしています。

 施設では、二〇〇〇年からの介護保険実施を前に、施設の評判ばかり気にして、職員の立場などまったく眼中にないような一方的な押しつけをしてきます。いつかは職員としての採用を信じ長年がんばってきた臨時職員の人たちを無視して、職員を身内で固めてしまうような採用をしており、職員の不満は募るばかりです。

 最近では、組合未加入者もあからさまに不満を口にするほどです。だからといって組合に入って、自分たちの人権、生活を守ることにがんばろうという人がいないのです。どうして危機感を持たないのだろうかと不思議に思います。

 当局はまだ組合の存在を意識した態度をとっているように見受けられます。しかし理事長はなんとかして組合をつぶし、自分の言いなりになる施設をつくろうと動き始めている様子がよくわかります。

 介護保険が導入されれば、施設間の競争が激しくなることは明らかです。だから「職員の質の向上を」と施設長は躍起になっているようですが、その前に、経営側の質の向上を考えなくては施設が生き残れないのではないかと思います。

 施設で働く私たちは、毎日少ない人数で一生懸命利用者へのサービスを行おうと努力しています。それなのにその努力を認めようとはせず、締めつけばかりでは、地域に開かれた施設、働きやすい職場はほど遠いように思います。

 私に残された退職までの限られた日々のなかで、何か一つでも明るい話題がないものかと毎日がんばっています。 


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