980515


社会支えるゴミ処理場だが…

労働環境は超劣悪

清掃工場労働者 近江 一郎


 豊島の産廃問題、全国各地での処理場建設をめぐるトラブルなど、環境問題はかつてなく大きな関心を呼び起こしている。また、昨年京都で開催された地球温暖化防止会議を通じても、環境問題に対する関心は、一般市民の間に広まっているように思う。

私の働く現場は、この環境問題にストレートに結びつく、ゴミ焼却場である。環境問題が扱われても、実際の労働現場のことについては誰も知らないか、あるいは知らされることがとても少ないと思う。

 世間は環境問題として、ダイオキシンやフロン、環境ホルモンなど、日常的にとりあげられているが、そこに働く労働者の実際が取り上げられることもない。

私が働いている現場も含めて、ゴミ処理に従事する労働者の職場環境は劣悪である。

私が働く焼却施設は、人口十万人を超す、県下第二の都市にある。焼却炉は最新のものが使用されている。この焼却炉は二十四時間稼働し、ダイオキシンはクリアーされていると言われている。

私の仕事は、大型ゴミの処理だ。家庭電化製品や、たんす、机類、ベッドなどが大型ゴミの常連だ。これらの物が運び込まれると、破砕機という大型の機械にかけて細かくする。それから、焼却炉に送るもの、不燃物として鉄クズ、プラスチックなどに仕分けして再利用するもの、また埋め立て地に運ばれるものに分別する作業である。

ところでこの作業は大変である。職場はホコリがまん延し、夏場になると生ゴミの腐臭がただよい、息もできないくらいの感じだ。また、ペットボトルの再利用がずいぶんといわれているが、ペットボトルを溶かすときに出るにおいは、とてもこの世のものとは思えないものすごいにおいがする。

 また、フロンガスも回収するが、安全衛生上は十分な配慮がある作業にはなっていない。

民間委託で健康診断もなし

 ところでこの市では、ゴミ処理関連の事業は、すべてを民間に委託し、市の職員として現場に働くものは誰もいない。ただ監督責任者として一職場に数人いるだけである。

委託された業者はそのためにもうけ第一の経営になり、労働条件は賃金でも福利厚生面でも労働者にとってはひどいものなる。

 この焼却場には職種によって四業者が入っており、私の働く業者では、年一回の労働者の健康診断さえやられていない。賃金は極力抑えられ、社会保険すら一部の者にしか付与されていない実際がある。

 ここで働く人びとは、多くが社会の底辺にある人たちで、この現場に従事することで差別や偏見もある。一般持ち込みで近所の人が直接ゴミを持ち込んでくることも多いが、差別や偏見を私自身も感じることが多い。

 みんな好き好んでこの職場にきていないが、それにしても労働条件は「環境問題」が叫ばれるにしてはひどいものである。何とかしたいと思うこのごろだが…。

 最近の不況の一端を、この職場でもゴミを通じて感じることが増えてきた。バブルのころは、大型ゴミも利用可能なものが多かったが、最近はそうでない。使えるものが極端に減ってきている。

 また、最近は厳しい不況のなかでリストラによって首を切られた人が、転職してくることも目立ってきた。

 毎日のゴミ処理に従事するわれわれ労働者の「環境問題」をもっと取り上げてほしいものである。 


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