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映画紹介

戦後在日50年史〔在日〕

闘いと生活を克明に記録

呉徳洙 監督作品


 在日朝鮮人の戦後五十年間の生きざまを、四時間にわたる記録映画が鮮烈に映し出す。

 第一部では日本の敗戦から一九九五年までの在日の闘いを振り返り、第二部では在日として生きる人びとの姿を追う。

 当事者が事実を語る形をメインに映画は展開していくが、登場人物の数が多いことに驚かされる。日本各地をはじめ、韓国、米国におよぶていねいな取材によって、歴史的にも貴重な証言が引き出されている。また、当時のニュースフィルムなども豊富に使われ、変化に富んだ音楽と合わせて、見る人をひきつける。

 第一部は、一九九五年八月十五日から始まる。韓国のソウルでは解放五十周年を祝う盛大な祝典が開かれ、旧朝鮮総督府の建物の先端が取り壊されるデモンストレーションが行われた。

 一方、日本の靖国神社では軍服姿の日本人たちが気勢をあげ、広島では朝鮮人被爆者の慰霊碑がいまだに平和公園の外に建てられている現実が映し出される。

 続いて、場面は一挙に敗戦直後に引き戻される。ここから一九五〇年代、六〇年代、七〇年代、八〇年代が、在日の視点でつづられる。朝鮮人学校設立運動、学校閉鎖反対運動、朝鮮戦争、血のメーデー、就職差別撤回、弁護士資格獲得、指紋押捺(おうなつ)拒否運動など、在日の人びとが果敢に闘ってきた姿を知ることができる。

 第二部では、在日の一世、二世、三世の姿が描きだされる。

 パチンコ景品交換所を営み波乱の人生を歩んできたハルモニ。韓国と秋田を「ふたつの祖国」と語るある芸術家。「清河(チョンハー)への道」を歌う新井英一さん。さらに三世たちの若々しい姿が映し出される。彼らの生き方も考えも実にさまざまだが、つねに前を向いて生きる姿が印象に残る。

 映画は「清河への道」の歌をバックに、「にあんちゃん」の著者の娘である李玲子さんが坂を登っていくシーンで終わる。

 呉徳洙(オ・ドクス)監督は「在日の人たちがなぜこんなに苦労するのか、そのうちわかるんじゃない? そんな気がする。今はわからないよ。あまりに渦中だもの」と語っている。 

 在日の人びとの今後の生き方は、彼ら自身が決めることである。呉監督の目は五十年後、百年後の自分たちの姿を見つめているように思える。

 戦争責任をあいまいにしたまま生きてきた日本人にとって、在日問題を考えることは、戦後の日本のあり方を問い直すことにもなる。この映画を多くの日本人に見てもらいたいと思う。    (Y)

 

上映問い合わせ先

映画「戦後在日五十年史」製作委員会

03―3485―2935


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