980425


大規模開発あいつぎ破たん

後始末に税金使うな

失政に怒りこみあがる

大阪 杉田 邦彦


 今月十五日の新聞に、「泉佐野コスモ、府負担六億円減額」という見出しの記事がのっていました。内容は、経営破たんした大阪府出資の第三セクター「泉佐野コスモポリス」の処理問題で、大阪簡裁の調停委員が新しい調停案を提示したことの記事でした。

 泉佐野コスモに限らず、大阪では最近、「大阪市の土地信託事業ピンチ、配当四十億円もらえず」「りんくうタウン、六百億円の分譲収入減少」といったように、大規模プロジェクトの破たんを伝える記事がひんぱんにのっています。

 生活が苦しいなかで、何百、何千億円単位での失政の記事は、読むたびに本当に怒りがこみあげてきます。

 泉佐野コスモはバブル期の八七年に株式会社が設立されました。関西新空港の関連事業として計画され、先端産業団地の形成がめざされました。資本金は、大阪府、泉佐野市、大成建設、大林組、大和銀行などが出資しています。

 十億円の資本金で、総事業費千百億円の事業を行うために、ほぼ全額を借入金に頼り、したがって金利支払いも支出総額の二二%を占める計画で進められてきました。計画では、三年前から土地の分譲が始まり、千億円以上の売却収入があるなかで、昨年度には事業が終了するというものでした。

 ところが似たような先端産業団地の構想は、泉州地域だけで他に四つもあり(和泉コスモ構想、岸和田コスモ構想、トリヴェール和泉、阪南スカイタウン)、また関西地区では学研都市の建設が推進されてもいます。空港ができたからといって研究施設の大幅な需要の増加など見込めるはずもなく、最初からずさんな構想の下での事業推進でした。

 九六年には事業の破たんが覆い隠せなくなり、府議会でもその処理をめぐって紛糾する事態となっています。この期間の借金の累計はすでに六百億円を超え、すでに膨大な金利が銀行に支払われてきました。

 やはり関空関連事業として計画された「りんくうタウン」は、総事業費五千五百億円で、こちらは大阪府が事業主体になっています。空港の対岸を埋め立てて、関連施設を建設したいとの構想は七〇年代からありましたが、バブル期に構想がどんどんふくらみ、大規模な商業施設、オフィスビル、ホテル、流通関連施設、国際会議場などが計画されました。企業もこの構想にむらがり、八八年の予備申請には分譲予定面積の五倍にのぼる進出申し込みが殺到しました。

 ところがバブル崩壊とともに、公共関連をのぞいて実際の分譲は遅々として進まず、府は膨大な借金の返済に追われる状態となっています。九五年に、府は大幅な計画の見直しを行いましたが、内容は当面の分譲価格の引き下げ、将来の地価上昇を見込んでの事業終了計画の二十五年間延長というもので、総事業費を七千四百億円に引き上げさらに借金を積み重ねるというとんでもないものでした。

 腹立たしいのは、事業の失敗とともにまっ先に撤退した大手銀行に対して、府は新たな借金を行い、さらにもうけさせる構造となっていることです。

 大規模開発の破たんは、結局は府民の税金で後始末がはかられます。また財政赤字の建て直しは府民生活の切り捨てで解決がはかられます。府は今年度予算のなかで、老人医療費の補助削減、私学助成の削減など、大幅なカットを行いました。その一方で、国際会議場の建設、北部での開発構想の推進など、採算が疑問視される新しい開発計画に取り組もうとしています。

 ほんのひと握りの大企業の利益だけが保証されている地方政治の実際を根本的に改めるために、私たちももっと力を蓄え、大きな力にすることが求められていると痛感しています。


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