980415


交通事故と郊外大型店

星野 光一


 あるタウン誌に、市内で交通事故が一番多い道路はどこかというクイズがあった。

 大型トラックやタンクローリーがひんぱんに走っている国道のバイパスかと思ったが、意外なことに、郊外につくられた比較的新しい道路だった。

 この道路は片側二車線で国道と並行していることもあって、車の交通量は多い。でも、ダンプや大型トラックがびゅんびゅん走るバイパスと違って、乗用車やライトバンなどが多く、どちらかといえば生活道路とでもいえそうな道路なのだ。

 不思議に思っていたら、この道路のすぐ近くに住んでいる友人が、こんな説明をしてくれた。

 確かに、ニュースで取り上げるような人身事故はバイパスの方が多い。でも、小さな事故が、この道路では年中起こっているという。しかも、事故はどんどん増えている。

 この道路沿いにはファミリーレストランや、スーパー、レンタルビデオ店など、大型店がならんでいて、客のほとんどが車でくる。

 以前は、所々に店があった程度だったが、今では車の販売店や、銀行、駅前から移ってきたスポーツショップなど、どんどん店が増えてきた。

 道路から曲がって店に入る車や、店から道路に出ていく車が、直進してきた車とぶつかる事故が後をたたないというのだ。

 彼の説明はまだ続く。

 工場などが集まっている場所なら、そこに出入りする車の多くは運転になれているプロドライバーである。でも、買い物客となると、軽自動車が目立つ。だから幹線道路への合流で、もたついている場面をよく見るという。

 どうやら、これが事故多発の理由みたいである。

 彼自身も、なんども危ない目にあったり、ぶつけられたりもしたことがあるという。

 この道路の沿線は、ここ二十年ほどの間に開発が進められてきた。どんどん家が建っている。小学校も二校になった。

 でも、市内全体の人口は少しずつだが減っている。昔からの商店街がある市の中心部で人口の減少がひどい。

 市内で規模も大きく歴史も古い商店街をかかえる学区では、今年の新入生が五十人を切った。このままでは、分校の扱いになりかねない。東京の都心で学校がどんどん廃校になっているという話を聞くが、今は地方都市でも同じことが起こっている。

 このままでいくと、市の中心街は老人だけの家が軒をつらね、買い物に行く商店もない陸の孤島になりかねない。

 その反対に、郊外に広がる大型店には客と車がどんどん集まり、事故や渋滞がひどくなっていく。新しくて明るいきれいな郊外の大型店は、目に見えない負担と犠牲のもとに成り立っていることを忘れてはならない。


Copyright(C) The Workers' Press 1996, 1997,1998