980405


「どこかいい仕事ない?」

主婦の労働力を買いたたく

「103万円ライン」に問題あり

パート労働者 吉田 晴美


 今年の春は例年になく桜の開花も早く、うきうきした気分になってもよさそうなものだが、どうも心が重い。昨年の消費税引き上げ以降、家計のやりくりはより厳しいものとなり、それに比べて私のパートの賃金は一円たりとも上がらない。このことが心を重くしている原因の一つである。

 数日前の友人からの電話。「どこかいいとこない? 自分のいまの条件にあった働き口といえばパートしかないかな」。ところが探してみても、三十五〜四十歳を上限にしている会社が多く、年齢制限でひっかかる。まだ十分働けるのに。世間では六十五歳定年制が論議されているのに。

 いまパートで勤めている私とて、決して好条件のもとで働いているわけではない。扶養の範囲以内でいかに働くかといった、まったくふざけたものである。要するに安いのである。

 パート労働では、正社員と同じように働いても賃金が安い。そこへもってきて、税金、年金保険料など取られるものだけは取られる。待遇面で、正社員とはずいぶんと差がある。割が合わない。

 会社側では「扶養の範囲以内で働けば第三号被保険者ということで健康保険料、厚生年金など引かれずに済む」などと得なようなことをいっているが、この不況のなか、正社員にする気がないことはみえみえである。そしてこの扶養限度額百三万円というラインこそが、賃金を押し下げているのである。

 再就職は女性にとって実に難しい。しかも長引く景気低迷のなか、企業は人件費削減を経営再建の最重点策としている。リストラで正社員を減らす一方で、その穴埋めとして、派遣社員の需要が高まっている。

 労働省の今年二月のまとめでは、九六年度の派遣労働者数は七十二万人と前年比一八%増、初の七十万人突破だという。正社員とそうでない社員との処遇格差の問題は解決されることなく、雇用のパート化が一段と進んでいるのである。こうした状況のなかでは、扶養の範囲以内などで働きたくなくとも、働かざるを得ないのが現実なのだ。

 にもかかわらず、最近この第三号被保険者からも厚生年金保険料を徴収しようという案が持ち上がっているという。

 冗談じゃない。正社員として働きたくとも働けない現実を無視して、よくもそんなことが言えたものだ。「不公平感が(正社員で)働く女性のなかにある」という役人の頭のなかには、現実社会の不公平さや不平等さなど、まったく見えていないではないか。

 ところで、昨年誘われて「おたかさんトーク」なるものに参加した。社民党の政策演説会らしかったが、いま一つその政策がはっきりしなかった。ただ覚えていることは、「もっとも弱い人びとの立場に立って自民党と政策討議をしていく」ということである。与党でいることの意義をさかんに述べていたが、消費税五%問題にしろ、第三号被保険者からの厚生年金保険料徴収案にしろ、どこが弱い人の立場に立った政策なのか。腹立たしく思うだけである。

 いずれにしても、パート労働者が暇にまかせて好きなように働いているとみられているとしたら、やりきれない。だれもが、賃金や労働条件で差別されることなく働けることを願っている。そういう闘いの輪が築けたときに、労働者全体の賃金や労働条件が向上するのではないだろうか。


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