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アリラン祭に参加して

踊りや劇で差別問題訴える

神奈川県  武田 香穂瑠


 第五回アリラン祭が三月十五日、川崎市の労働会館で開かれました。私は案内をもらっていたので行ってみました。

 このアリラン祭は、在日韓国・朝鮮人が多く住んでいる川崎市内にある高校の朝鮮問題研究会や朝鮮文化研究会が中心になって始まったものです。今年は川崎市以外の学校も含め十二の学校から参加があり、在日と日本の生徒、教師がいっしょになって行われました。

 私が一番印象に残っているのは体験発表です。「優位に立つものと低く抑えられたもの」を医者と患者にみたてたコント仕立てのものでした。

 医者は「どこが悪いですか」とたずね、患者が「ここが痛い」などと答えると、医者はちょっと見て「平気ですね。大丈夫ですよ。じゃ時間もありませんから、また」と追い返してしまいます。次の場面では患者が「足が痛いんです」というと、医者は「ああ、盲腸ですか」と勝手に診断してしまうのです。

これらは、優位に立つ側が、低く抑えられたものの声をろくに聞かないことをコントで表しています。なかなかおもしろく意味深いものだと感じました。そして私たちが在日や障害者に接する場合の態度など考えさせられるものでした。

 また在日のOB・OGからのアピールもありました。OGの女子大学生は「高校では本名だったが、大学に入ってからいろいろ考え、日本名を名乗っている。今日、アリラン祭をきっかけにもう一度考えてみたい」と、話しました。彼女は発言のなかで、思いがつのって涙を流しましたが、決して差別された話をしませんでした。それは逆に無言の迫力を感じるものでした。

 在日の高校生による創作劇「プンムルノリ」(農楽―豊作を祈る踊りのこと)は、在日の生徒に日本人の生徒から「朝鮮語ぺらぺらでしょう」と聞かれ、「あまりできないんだ」と答えると「なんだフェイントか」といわれた体験をテーマにしていました。在日の生徒は「僕は日本語をしゃべる韓国人」「差別をなくすには在日と日本人の、僕らくらいの世代の努力が必要だ」と述べていました。

 桜本中学校の日朝日韓友好同好会の生徒による農楽もあり、体のしんまで響くもので、うまいなあと感心しました。朝鮮半島の文化を知るところからお互いの理解が深まり、差別問題についてもよい方向に行けるのではないかなと感じた一日でした。


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