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山一のように特融をくれ!

中小零細は死ねということか

自営業  川上 俊一


 伝統ある商店街が、「シャッター通り」などといわれる時世になりました。自分自身が商人として二十年近く生活してきた者として、その閉まったシャッターの一つひとつに、苦いというより深刻な事情がつまっていると思うと、いつも身につまされます。商人は表向き農民ほど寡黙ではないけれど、「自分の商売が危ない」「もうダメだ」ということが事実であればあるほど、決して他人には言わないものです。

それは自分が営々と築き上げてきたもの、築き上げようとしているもの、生活、未来、家族など、すべてを失いかねないからです。

 おりしも山一証券の店舗閉鎖が報道されています。職を失う人には気の毒ですが、「チョット待ってくれ!」と言いたくなります。「おれたち中小零細の店舗閉鎖はいったい何だ」と。店舗解体の費用さえ情けようしゃなく請求され、在庫の山は仕入れ額の何分の一にしても満足に引き取ってくれるところはありません。店を閉めるのにはン十万円ではすまないのです。店を廃業するのでさえ、また借金しなくてはならないのです。

 こんな例は山ほどあります。ここ神奈川県では、この三年間で五千軒近くの小売店がなくなりました。この数字は開店と閉店の差し引きした数字だから、零細小売商では、この倍は泣くに泣けない状態で店を閉めたのです。

 「山一のように特融をくれ」と言いたい。「退職金をくれ! ボーナスもほしい」「借金をなくしてくれ」と言いたい。

 私自身も友人、知人もこの数年間で店を閉鎖した経験があります。友人にしか話す気にはなれないことですが。それぞれ店舗移転、経営転換、勤め人になったりしました。いずれも大型店の無秩序な進出、規制緩和などなりふりかまわない弱いものいじめで追いつめられ、一年先も読めない状態です。

 まだ言いたいことは山ほどありますが、団結するのが困難な位置、立場にあるものはどのように闘えばよいのでしょうか。


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