980305


働く所がなく 町はさびれる一方

転出届に役場はガックリ

会社員  神山 耕一


 暖冬といわれる今年の冬、南北に長い日本列島、こちらでは桃の花も開きすっかり春めいてきたこの頃です。

 深刻な不景気、大蔵省など官僚の腐敗、大銀行救済にほん走する政府、政治家の不正や自殺、怒る国民の目先をごまかそうとテレビは冬季オリンピックの大騒ぎ。その間にもアメリカは大量破壊兵器の査察を口実にイラク爆撃の準備を着々と進め、軍事的圧力を強めていました。湾岸戦争の時、あれだけ国会でも論戦になり、PKO法案の時などもさまざまな論議がありましたが、今またペルシャ湾には横須賀を母港とする空母インディペンデンスをはじめ米艦船が集結して、軍事的威かくを行っているのに、国会でもまともな論議もなされないし、国民にもまともな呼びかけもないことに空恐ろしさを感じます。

 どの党も「イラクが悪い」の大合唱ですが、テレビを見ていた娘が「イラクが悪いというけど、アメリカのほうが核兵器だって地球を何回も破壊するほど持っているじゃない」と、子どもでもわかるというのに。それに今度のアメリカのイラク攻撃については、サウジアラビアをはじめ湾岸諸国もアメリカへの協力を拒否していました。それなのに日本はまったくアメリカの言いなりになって、協力させられています。外務大臣もアメリカの行動を支持すると言っています。こんな姿をアジア諸国は見ているのでしょうが、まったく日本国民として情けないかぎりです。

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 話は変わりますが、仕事の都合で、長年住み慣れた町から新しい町に転居することになり、市役所に転出の手続きに行きました。市民課の係の人は、転出の届けだとわかるととてもガッカリした顔をしました。年々人口が減り続け、県内でも人口減少の割合が多い町だから、当然でしょう。既存の工業が衰退し、おまけに農業が不振で、若い人たちの働く場も少ない町ですから、このままでは人口三万人を割り込むのも時間の問題です。

 市当局は盛んに町おこしをアピールしていますが、目先のイベントや暮らし向きには直接関係ない環境問題などだけではどうにもなりません。だから若い人はもちろん、働き盛りの人でも、結構町の外に出ていく人が多いのです。

 確かに国の全体の生き方が根本的に改まらなければ地方は切り捨てられ、さびれてゆくのでしょうが、今の政府のやり方を見ていると、公共事業の削減などでこれからも地方にとってはますます厳しくなっていくようです。

 子どもを連れて転校の手続きで教育委員会にいった時、「どこへ行っても忘れないでね」と言われたときは思わず熱いものが込み上げてきました。

 新しい町は、都市化が次第に進んでいるところで大型店などもどんどん周辺に出てきています。人口も次第に増えているし、見た目は発展しているようですが、よくよく見ると既存の商店街などは相当にさびれています。この町にもまたいろんな矛盾がたまっているのでしょう。

 とりあえず、新しい町と新しい職場に慣れることが課題ですが、じっくり腰を据えて頑張っていこうと思っています。


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