980225


商店の転廃業あいつぐ

切り捨てる銀行に怒り

自営業者  田村 弘


 朝食をとりながらいつものように新聞を手にする。ひときわ大きな活字が目に飛び込んでくる。『一月の企業倒産千五百二件』『前年度比二四・八%増』『貸し渋りが原因三六%』
 次のページに目を移すと『銀行保有の土地含み益、一兆三千億円減少!』
 ちょっと待て?
 確か知り合いの商店や同業者も昨年の暮れから何軒も倒産・廃業をしている。さらに商店街も空き店舗で虫食い状態。周りを見ただけでも、全国で千五百件なんて信じられない数字だ。有限会社や個人商店の窮状を考えたら、その数十倍いや数百倍の規模で倒産・転廃業が繰り返されているだろう、というのが自分の実感だ。

 昨年の暮れに、隣町では『大型店の出店反対総決起大会』が地元商工会議所をはじめ、商店街連合会などの呼びかけで開催された。断固反対の決議とともに「ガンバロー」と突き上げた握りこぶしにも悲壮感があふれていたと聞く。
 わが町に話を戻そう。先月また同業者が倒産した。創業も古く、小売商組合の理事長も務めた地域一番の店であった。人づてに聞くところによると、倒産の数日前からメーカーや債権者が商品を片っ端から引き上げていったという。倒産させまいと、必死の思いで金策に走り回っている社長のいない間の出来事だったという。金策のかいもなく、銀行は助けてくれず、売る商品もなく、倒産の当日を迎えたとのこと。結局倒産させられたのである。恩をあだで返すような銀行とメーカーに。その日から社長とその家族の行方はまったくわからない。家屋敷と店舗は抵当に取られたまま…。
 ここ一、二年の間に同業者のうち、八店舗がそうした倒産・廃業を余儀なくされた。次はわが身かと夜も寝られない日が続く。銀行の貸し渋りが心配だ。借りては返し、返しては借りる自転車操業。情けないことに銀行だけが頼りだ。数年前までは「社長! 社長!無担保でいいから」と、もみ手で信用貸しを頼みに来ていた銀行。その銀行にビクビクしている今の自分の姿が情けない。行方知れずの同業者への思いと銀行への怒りが重なって胸をしめつける。


Copyright(C) The Workers' Press 1996, 1997,1998