980225


新郵便番号制

問題だらけの7ケタ導入

得をするのは誰だ?!

郵政労働者  永田 一朗


 二月二日から、郵便番号が七ケタになった。利用者も、住所録を書き換えたり、分厚い番号簿で番号を調べたりと手間が増えていると思うが、郵便局の現場でも、さまざまな問題が起きている。七ケタ導入の実態について、報告したい。
 郵政省は「二〇〇五年まで料金の値上げをしないために」と大々的に宣伝をし、新しい郵便番号制度をスタートさせた。「七ケタの郵便番号を書けば住所を書かなくても届く」などといううわさも流れているが、実際はきちんと住所を書かなくては配達できず、せいぜい省略できるのは県、都市くらいのもので、これはもちろん番号が正しく書いてあることが前提である。
 実際はどうだろうか。七ケタ郵便番号では、番号を機械で読みとり、郵便物を配達区分(配達地区ごとに仕分ける)から配達道順組立(配達する順に並べる)までを機械化する。
 これまでの発表では、七ケタの機械化に伴う経費は五千億円。機械化で手作業を省略し、今後十年間で職員を八千人削減することで、経費を累計で二千億円以上節減するという。しかし、この七ケタ化は一台四億円とも五億円ともいわれる機械を十年間で千五百台入れ、諸経費込みで実は総額一兆円以上かかると予想される大規模な設備投資である。この機械化は新たな赤字を生むのではと疑問視されている。
 また、新型の区分機は昨年六月から実験が開始されたが、多くのトラブルやエラーが起こっている。区分や組み立ての間違いもかなり多く、誤配も増えている。実験局の中で「一番うまくいっている」といわれる東京・深川局でさえ、郵便物の一〇%以上が正しく組み立てられなかった記録がある。管理者が職員に「あて名を十分確認して配達するように」と注意しているという実態だ。さらに機械の安全性にも問題がある。引火点が三十度というバーコードインクを使用するため、爆発の可能性があり、すでに東京・成城局では爆発事故が起こっている。

 こうした問題が指摘される中での今回の大設備投資は、いったい何を目的としているのだろうか。
 今回の新型区分機の入札は、東芝とNECの二社だけの無競争である。今までの区分機も同様で、これまで「談合」がいわれていた。しかも実用化されたといっても、実は未完成品で、郵政省の金で東芝とNECが郵便局の実際の仕事で実験をし、利益を得ているといっても過言ではない。業者も「これは未完成品。まだ試験段階の機械」といっているのだ。
 「二〇〇五年まで料金の値上げをしないための七ケタ化」というのは全く根拠もないうそっぱちである。郵政省のいっている数字だけ見ても、単純計算で三千億円以上が赤字になる。これから先は赤字解消のための値上げと、より大規模な合理化が待ち受けているだけである。すでに、配達にかかわる職員の減員が行われ、十人単位で減員となっている職場もある。しかし、区分機を扱う郵便課では一つの郵便物を二度機械にかけなくてはならず、むしろ人手が必要となってパート労働者がこれまで以上に増えている。正規の職員が賃金の安いパート労働者に置き換えられようとしているし、民営化を引き合いに出されながら、労働条件の切り下げにさらされている。
 郵政最大の労働組合である全逓は「トータルとしての労働条件の確保」などとあいまいな言葉で、「生首さえ飛ばなければ労働条件の悪化は仕方がない」と労働者をあざむいているが、今後、生首の飛ばない保証はどこにもない。やっていることの実態は大企業の利益のために大多数の利用者の財布から銭を吐き出させることに加担し、郵便局で働くすべての労働者に奉仕させていることにほかならない。
 最後に、七ケタ化の問題は郵便料金の値上げのことばかりでなく、武蔵野市議会でも問題となったように、発送リスト切り替えの費用の負担や手間の問題が発生しているし、プライバシーの問題にも深くかかわってくることもつけ加えておきたい。


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