980215


障害のある人も、ない人も

あたり前に暮らせる社会を

福岡県  永井 翠


 みなさんは全家連をご存じですか。これは精神の病気をもった人の家族の会のことです。正式の名称は全国精神障害者家族会連合会といいます。この家族会の第三十回大会が昨年の十一月十九日から大分県別府市で開催され、それに参加したので報告したいと思います。

 この大会は一九六五年に参加者五百人からはじまり、その後回を重ねるごとに参加者は増えて昨年は四千人の精神障害者、家族会会員、保健所、病院、共同作業所の指導員、ボランティアなどの人びとが集まりました。

 大分大会のメインテーマは、精神障害者が地域で普通に生活できる「ノーマライゼーション」(障害者、高齢者といっしょに暮らすのが当然とする考え方)の実現をめざしてということで、シンポジウムと五分科会がおこなわれました。

 はじめに、精神障害者のおかれた現状について私が知りえたことを簡単に述べたいとおもいます。九三年の厚生省の資料によると精神障害者は全体で百五十七万人、そのうち精神病院に入院している人が三十三万人、在宅、通院者が百二十四万人います。

 五〇年に成立した精神保健及び精神障害者に関する法律が、九五年、四十年ぶりに改正され、それまでの保健医療中心に加えて新たに障害者の自立と社会参加のための福祉政策が行われることになりました。

 それまでは精神病の人は患者として精神病院に入院していました。患者であって障害者ではなかったのです。それが長い間の運動により、精神障害者として、他の障害者と同じ扱いになろうとしています。

 しかしこれは始まったばかりなので、いろいろな点でまだ遅れています。また、九三年には「障害者対策に関する新長期計画」として障害者プランがつくられました。これは、身体障害者、精神薄弱者もふくめてのプランです。九六年から二〇〇二年にかけて、障害者が地域で生活ができるように、また社会的自立を促進するなど七項目にわたる施策を図っています。

 このプランをもとに、各地方自治体も障害者計画の策定にはいっています。私の住んでいる市でもアンケートをもとに作成段階にはいりました。

 次に、分科会に参加した感想です。心のバリアフリー(障壁を取り除く)を目指してということで、最初の報告者は障害者自身でした。病気になった経過やはじめは地域の仲間、家族会、保健所の講演会という順番で話し始め、だんだんと広がり、こうして全国的な大きなところで発表することになるまでを堂々と話してくれました。「自分の体験を語ることで精神障害について知識を持ち、理解するようになった。情報、交流の場をたくさん持つことで、自分の中にある偏見に気がついた。自分の周囲から変えていくことが大事である。そして自分が障害者であることを発表することはより生活しやすい環境を整えていくことにつながる」と語ってくれました。

 次に親の立場からの報告でした。「息子が二十歳で発病し、一年間休職して復帰したが再発して職場は辞める。そこで自宅から通勤できる職場を探すが、いずれも長続きしなかった。その後、就職した現在の職場は上司に精神障害に理解のある人がいることや同僚も障害をもっていることを知っている。主治医や保健婦さんなどから適切なアドバイスをうけたりして周囲の人たちの支えで六年間つづいている」と話されました。

 三番めはてんかんの子どもを持つ親の報告でした。「てんかんの運動を通じて、いろいろな障害者のことを知る。地域に根ざした活動ということで祭りを毎年行う。祭りを準備するなかで、お互いに知り合い障害者と地域の人びとが自然とふれ合うまでになった」ということでした。

 私が地域の家族会に参加するようになってからまだ一年目です。家族会の活動は支える人も障害者の親が中心ですが、高齢化してきたり、だんだん疲れてきて活発にやっているとはいえません。でも今回、全国から多くの人が集まり精神障害者がおかれている現状や、どうやって普通の人と変わらずに生活していくか、すでにある法律をおおいに活用して仕事や住居などを整えていくか、進んだ経験を学びました。

 今の政治のあり方や経済状態をみると、障害をもつ者にとってたいへん暮らしにくい社会だといえます。精神病の本当の原因はまだわかっていません。いろいろな説はありますが、薬をきちんと飲み続けることが必要な病気なのです。精神障害者にとって薬が車イスでありつえの役割をしています。また、精神障害者の人権にも配慮して偏見をなくすことも大切だといえます。ストレスの多い今の社会では、この病は減ることはなく増えるばかりです。

 障害のある人もない人も当たり前に暮らせる社会を少しでも早く実現したいものです。


Copyright(C) The Workers' Press 1996, 1997,1998