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検査や手術断る人も
医療は負担増、「山一」へは支援
看護婦・石川 富美子
看護婦をしています。九月一日からの医療費負担増で窓口での混乱が起きています。医療費を見てびっくりし、「何でこんなに高いんだ」と説明を求める患者さんや薬を断る患者さんが増えました。いままではそういうことはなかったのですが、特に「この薬はいらないから」と断る方が多くなっています。
病院全体では外来の患者さんが減っています。私は病棟担当ですが、時々外来のロビーに下りてみると、がらんとしています。私の勤める病院は立地条件が悪く、今までも外来は少なくて他の病院からの紹介で入院される患者さんが多かったのですが、どこの病院も大変なので紹介される患者さんが減りました。今、ベッドのうち一割以上が空いていますが、農繁期を過ぎたこの時期にこれだけベッドが空くのはめずらしいことです。
地域で最近開業した先生は、順調に患者が増えて良かったと思っていたら、九月からガタッと下がったと言っていました。外来だけの診療所は大変です。「医療界は氷河期に入った」などと言われています。
さらに検査や手術の件数が減っています。胃カメラの検査などは、勧めても断る患者さんが増えました。市内でも患者の多い婦人科の先生に聞いたら、外来は減っていないが、不妊治療にかかわる手術などは減っていると言っていました。命にかかわる手術はさすがに減ってはいませんが…。
そんな状況なので看護婦みんなで病院の経営がどうなるか心配しています。経営自体が厳しくなりました。それに患者数が減ったので看護婦が余るような状況にもなっています。市立の病院が統合や人員を削減していて、その影響で再就職がむずかしくなっています。市が経営していた看護学校も閉鎖が決まりました。
お年寄りにやさしい医療システムを
老人医療費を定率制に移行して老人の負担を増やすことが議論されていますが、老人の場合、若い人と治療費が違いますから、大変なことになると思います。
老人の場合、病気は一種類ではなく、体全体が弱っていて慢性的に疾患を持っている人が多いのです。例えば骨折で入院しても内科的な治療をしながらということになるので、どうしても治療費は高くなります。それを一割負担にすると大変です。例えば酸素吸入などは高く、すぐに百万円ぐらいになってしまいます。その一割では十万円。家族の扶養や年金で生活している老人にそんな多額のお金が払えるのでしょうか。家族が病院に連れてこないという事態になることも考えられるのではないでしょうか。
すでに以前は無料だった老人医療がどんどん上がっています。一日当たりの入院費が千二十円で、給食費が七百六十円。三十日で五万三千四百円。薬などは別で普通に入院していてもこれだけかかるのに、一割負担になったら払っていけるのでしょうか。
厚生省は無謀なことを考えるものです。これまでも厚生省から入院患者を三十日以内に退院させれば医療の保険点数が高くなるなどの指導がありましたが、老人を三十日で退院させるなんて大変です。治療が終わったとしても、家に帰れない老人もいるので、そういう人は病院を転々とすることになります。
医療や介護にもっと財政を
公的介護保険もおかしいと思います。少子化社会で介護する人がいなくなるのに、公的介護保険は「施設に預けないで在宅で」となっています。現状を見れば、だれが在宅で年寄りを看られるのでしょうか。一人が在宅で何人もの寝たきり老人を介護するなんてできません。
それに介護保険とは何なのか、医療の先端にいる人にも知らされていません。ところが医療界はすでに、介護保険が導入されたらケアマネージメント(介護プランをたてること)の主導権を誰が取るかで争っています。看護婦が取るのか、ケースワーカーなのか、介護福祉士か医師か。ケアマネージメントを握ったところが老人介護の主導権を取れるので、看護婦協会もやっきになって介護保険になった場合の実務のイロハについて研修しています。でも介護保険とは何か、というところは抜けていて、医療界はすっかり踊らされている感じです。
現場の看護婦たちが怒っているのは、税金の使われ方です。健康保険が赤字だということだけ宣伝して、税金を使わずに保険制度をどうかしようとしていますが、山一証券などが倒れたときにはものすごい多額のお金が投入されています。
これだけ社会が高齢化しているのだから医療費が増えていくのは当然のこと。医療費が減るはずがないのに、税金を使わないようにしようという動き自体がおかしいのです。人の健康を守ることは国がすべき最低ラインのこと。そこにもっとお金をかけるべきです。消費税を五%に上げたお金はどこへいっているのでしょうか。
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