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 市議会への陳情奮戦記

 「自由主義史観」をストップ

 静岡県清水市・磯谷 千代美


 静岡県清水市より、やってよかったあ! という陳情の報告をします。
 今年二月の市議会に「『中学校社会科教科書の記述内容の改訂』に関する意見書採択についての陳情」というのが出されました。中学社会科・歴史の教科書を「自虐史観である」として、やっと載った「従軍慰安婦」の記述も「削れ」というものです。知ったのが遅すぎ何もできませんでした。
 そして六月。陳情書の下書きを作って前市議の友人と文面を相談。夜中に文面を直したり、署名してくれる人を捜したりと協力しあい、やっとの事で、締切日の夕方、三人で議会事務局へ。なんとか提出することができました。議会事務局の人が「陳情されますか?」「はっ?」。なんと、清水市議会では、希望すれば委員会で、陳情の趣旨を三分間話すことができるのです!もちろん、希望しました。
 ところでその数日後、夜十時半過ぎ、わが家に電話がありました。「教科書是正連絡協議会の一会員ですが、あなたの陳情についてご意見を伺いたい」。中高年のドスの聞いた男性の声です。子供がやっと寝たばかりだったので、明朝かけ直すと言ったのですが、のらりくらり。結局Nと名乗り、自分からまたかけるからと切りました。私が陳情したのをどこで知ったのか、電話番号をどこで知ったのか? 夜遅く、名乗りもしないで電話をかけてくるのは、おどし以外の何物でもありません。
 さて教育経済委員会の当日、仲間五人で傍聴しました。二月の陳情と、それに反対する(つまり従軍慰安婦の記述を削るなという)今議会で出された四つの陳情を一括討議するということでした。
 陳情は、まず委員会の休み時間に陳情の趣旨を希望者が各三分間述べるという形式で始まりました。私は陳情の趣旨と、以前フィリピンに行った時、歴史を知らず恥ずかしい思いをした経験を話し、これからの国際化の時代に、アジアの人びとと出会った時、過去を知らないでは真の友好関係を作れない、自分の子供たちには恥ずかしい思いはさせたくないと話しました。
 教育経済委員会の中では、教育長が「性の問題だから、というご懸念もあろうかと思いますが、性教育は系統的に行われるので、これ(従軍慰安婦)が出ているから、ここでどうこうというものではない」と答弁したり、文部省を擁護しました。
 公明党の女性議員は「文部省も作る時点で学識者の意見も聞いて、事実として載せると決まった。私は新しく出された陳情に賛成したい。戦争とはこんなに悲惨なもの。残酷なものは教えないということではなく、残酷だから絶対戦争を起こさないとなると思う」と述べ、他の議員もそれなりにちゃんと発言しました。
 なのに、委員長は「すべてを継続としたい。挙手願います」とまとめ、そこで皆挙手して、反対したのは、公明党の女性議員だけ。結局双方継続となりました。
 傍聴に行った私たちは、どうも納得できない。はっきりと二月の陳情を賛成と言った議員は一人もいない。文部省が作った教科書で、教育委員会は文部省と同じ立場、心配もないと言う。私たちの側の陳情を採択してほしいと二人の議員がはっきり言った。その他の議員も、だいたいは、私たちの意見に反対はしていない。なのに…何故、採択とならないんだ! いい線いってたのに。そうだ、初めにこちらに賛成していた共産党の議員は何故、継続に挙手したんだ。自分の支持者たちも陳情出しているのに、何故それを継続なんて言えるんだ。だいたい委員長や副委員長のまとめ方がおかしい。とまあ、大いに盛り上がりました。
 さて、九月議会では、双方が取り下げるよう委員長が各自に要請することを前提に、すべて継続となりました。
 そして、十月彼らがやっと取り下げました。こうして県内で唯一、改訂要求の出された清水市議会でしたが、何とか採決を止めることができました。
 この機会に、子どもと一緒に教科書を読んでみました。自分の子どもの時と比べ、かなり良くなってきているのも事実です。それが授業の時にちゃんと教えられているかわかりませんが。親も、受験用の科目ばかりでなく、教科書を読む事が大切だし、そこから自分の歴史観をきちんと伝えていくことができるのではないでしょうか。 


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