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 海外生産増え、先行き不安

 中小の賃金は残業頼み

 広田 健二(自動車下請け工場から)


 私は自動車下請け工場で働いています。今は親会社の輸出が伸びているので仕事はかなりあります。私たち自動車下請け工場では、残業してやっと生活できる賃金なので、残業があって助かっているというのが実際です。もちろん部課によって違いはありますが、だいたい土曜日の出勤を含めて毎月四十時間くらいの残業がありますが、これは今年で一番多いと思います。
 そして来年三月の年度末までは仕事量も増える見込みなので、残業も増えていきそうです。特に中高年の人びとは、家のローンや子どもの進学などもあり、賃金が増えているので喜んでいます。しかし、若い人は土曜出勤、残業が続くとデートもできないので会社を辞めてしまう人もいます。
 こう書くと好調のように思われるかもしれませんが、先行きは不安です。親会社が輸出している車種のうち、一つは来年秋には生産中止になります。当然、その分の仕事がなくなります。また、海外生産はしょっちゅう話題にのぼるようにまた増えていくようです。
 そして最近のアジア通貨危機があります。日野自動車はタイへのトラック輸出が減り、日産ディーゼルもアジア向けトラックが減っており、かなり大変なようだと会社もいっています。うちの親会社はアジア向けの輸出は少ないほうなのでまだ安心ですが、欧米の株価暴落のようなこともあるので心配です。
 ですから会社は「最後は雇用調整が必要になる」として、仕事が増えてもパート・アルバイトしか入れません。最近は仕事量が増えたのでパート・アルバイトがかなり増えています。これからも増えると思います。
 また私は労働組合の活動をしています。今は秋の諸要求ということで、退職金、諸手当、労働時間の短縮、残業の割増賃金などで会社と交渉しています。これらの要求をすべて実現して、やっと他社と肩を並べることができそうです。しかし、他の会社でも組合が頑張れば、そちらの労働条件も上がるので追いつかないかもしれませんが…。どうしても下請け会社では労働条件が低いので、頑張りたいと思っているところです。
 それと労資関係は本来対等であるはずのものが、会社は「会社あっての組合だろう」という態度をとっています。会社は組合が強くなれば、会社への圧力が強まるので、組合の弱体化を願っているのが、交渉のなかで見えかくれしています。私たち組合は先輩たちの努力や私たちの努力で力を少しずつ、つけてきたと自負しています。私たちの要求は当然の権利ですが、会社はそれさえ与えてやっていると見下した態度です。
 また先日トヨタで死亡事故がありましたが、うちの工場でも小さな労災がありました。これまで衛生安全委員会については、かなりおざなりでしたが、本腰を入れてきちんとしていこうとしているところです。
 ただうちの組合員は細かいことでも組合のほうに文句を言いにきます。よその組合の話を聞くと組合員が直接、組合事務所に文句を言いにくることは少ないようです。その点でいえば、うちの組合は自由にものを言える雰囲気があり、よいほうかなと思っています。こうした組合員の人びとと力を合わせて、組合の力をもっとつけて、本当の意味で労資対等を実現するために頑張りたいと思っているところです。 


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