970915


腰痛で退職に追い込まれ

健康に働ける社会を

青木美恵子(栄養士)


 食品関係の工場の中にある社員食堂で栄養士をしています。大きな工場で、一日に三千食分の食事にかんすることを、私と管理栄養士一人の二人でやっています。

 短大を卒業してすぐにこの会社に入ってから、まだ三年と数カ月ですが、腰を痛めてしまってこれ以上仕事が続けられなくなってしまい、今年いっぱいで辞めることになりました。

 私は事務を専門にする栄養士で、献立をつくったり、材料の在庫確認や注文・検品、それと毎日の献立や調理にかんする調理場からの苦情の受け付けと処理などをしているのですが、材料の在庫整理がクセモノです。

 三つある冷凍庫の中で、週に一度、一箱十キロ以上もある冷凍食品を整理するのです。これはものすごい重労働で、女性一人でやるのは、はっきりいって大変です。時間がないので一度に二箱(つまり二十キロ以上)を持ち上げて移動させます。せまい冷凍庫の中ではどうしても体勢が不安定になってしまうので、腰に大きな負担がかかってしまいます。それに当然ですが気温はマイナスで、防寒着を着ていても、体が芯まで冷えてしまいます。

 人手不足で、私のような事務職でも配膳や食器洗いにかりだされることがあるくらいですから、調理場のおじさんたちに「手伝ってあげたいけどこっちも忙しくて」と言われながら、ずっと一人でやっていました。

 そうしたら、だんだん腰が痛くなってきて、足がしびれてくるようになりました。昨年の夏、とうとうガマンできなくなって病院へ行ったところ、「椎間板ヘルニアで、それもかなり重い」と診断されました。そしてすぐ入院。医者にとにかく安静と言われました。体を動かすのは好きなのですが、スポーツは水泳以外は禁止になってしまいました。

 退院してしばらくは、歩くのもやっとでした。イスに座っているのもつらく、つい、食事のときにテーブルにひじをついてしまいます。病院でいわれたとおり腹筋と背筋を強くする体操を毎日少しずつ繰り返して、どうにか普通に歩けるようになりました。

 職場では、私以外にも腰を痛めている人がたくさんいます。お弁当の配送などで、重い弁当箱をまとめて持ち上げたり、巨大なかまや鍋の中身をスコップのようなヘラでかきまぜたりする調理場では、ハリをうちながら仕事をしている人もいます。

 最近、また調子が悪く、とうとうドクターストップがかかってしまい、今の仕事はやめることになりました。とりあえず仕事をやめて、少しでも腰をよくしたいと思っています。でも、この病気は完全に治ることはないそうです。手術しても再発するケースが多いと聞いています。

 まだ勤続三年くらいしかありませんから、退職金も微々たるものだし、なるべくはやく次の仕事が見つけられればいいのですが、栄養士の資格だけしかないので、腰に負担をかけないような仕事はなかなかありません。管理栄養士の資格をとろうとこの二年間挑戦しているのですが、仕事のあいまに勉強するのではとても難しいのです。

 私の職場には組合がありません。工場で働く人たちの組合はあるのですが、食堂は下請けですから組合がありません。だから、といっていいのかわかりませんが、食堂の事務職は残業手当もほとんど出ません。今回の給料では、めずらしく七時間分の残業手当がついていました。同じように残業していても全くつかないときもあります。

 労働組合がないと残業代さえまともに払われなかったり、人手不足の結果体を壊してしまったりで、くやしい思いをしています。本当に健康に働ける世の中にならないと、お金も体も持たないと感じている私です。


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