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労働新聞 2022年9月25日号 8面・通信・投稿

二胡を通じて、日中の架け橋に

夢は「世界で活躍する

二胡奏者・本多ゆとりさん

 わが国と中華人民共和国との国交正常化から50年を迎えようとしている。しかし、日中関係は予断を許さない状況が続いている。こうした状況だからこそ、日中双方の民間交流がいっそう重要だ。中国の伝統的な楽器である二胡の演奏者である本多ゆとりさん(19歳)はこれまで、国内外のさまざまなコンクールやイベントで活躍、優秀な成績を収めている。また、日本の同世代を中心に二胡の魅力を伝えようと、YouTubeなどへの配信も積極的だ。9月には中国音楽の最高学府といわれる中央音楽学院に進学する。その本多ゆとりさんに二胡を始めたきっかけ、将来の夢などについて聞いた。(文責・本紙編集部)


きっかけー「二胡を極めよう」と決意
 自分が二胡を始めたのは小学校1年生、7歳のときです。きっかけは、自分の祖母が中国の文化が元々大好きで、太極拳や、水墨画、そして、中国の伝統的な楽器である二胡を習っていました。
 自分がその祖母の家に遊びに行ったときに、祖母が二胡の練習をしていました。 初めて見る楽器で、試しに弾いてみたら、不思議な音が出たんです。ドキドキする感覚でした。
 そこで、「自分も二胡をやってみたい」と思ったのが、一番のきっかけです。当時は卓球に夢中でした。小学校2年生のときに県代表で全国大会にも出場しました。卓球が「主」で、二胡はいわば「趣味の延長」みたいな感じでした。
 でも、その卓球の全国大会が終わり、「もう卓球はいいかな」と思って…。燃え尽きたというか…。
 それで、「次、何をしようか」と思ったときに趣味で習っていた二胡を「極めたい」と、小学2年の秋に「チェンジ」しました。
 それからいろんな先生に習いました。最初の先生は日本人でしたが、より専門性の高い高度な技術を学ぶために二胡奏者や中国の音大を出た先生、また音大受験を視野に入れてからは、春休みと夏休みに中国の音大の教授にも北京へ習いに通いました。
 小学校4年生のときに、半年間、祖母と母の3人で中国の北京華文学院に留学しました。
 目的は、二胡は中国の楽器ですので二胡を学ぶ上で中国の人々の生活や文化・言語を肌で感じることがとても重要だと、祖母と母が考えたからです。
 留学生活は、午前中は学校で中国語を習い、午後は二胡練習、週2回は片道 1 時間半かけて音大生に二胡のレッスンを受けるという生活です。
 北京華文学院は華僑、外国にいる中国人の子孫に中国語を教えるという学校です。そこに華僑でもない自分たち日本人が三世代で入学したので、大変驚かれました。  実際に10歳の時に生活した経験は二胡を続けるうえでとても貴重なものとなりました。

二胡の魅力と難しさー楽しいから続けてこられた
 やっぱり二胡の魅力はその音色です。中国では二胡の音色は女性の声に例えられています。また独特の二胡の形にも惹(ひ)かれました。
 日本でも「女子十二楽坊」(中国の古楽器演奏女性音楽グループ)の影響で二胡は注目され人気が出ました。
 文字通り、二胡は二つの弦で奏でる楽器です。弦を少しずつ押さえて音色を変えていくんですけど、ギターでいう「フレット」(ギターの指板上に打ち込まれた棒状の金属)が一切ありません。どこを押したらどの音が出るか、とにかく感覚を身につけるしかありません。手を移動しても正確な音を出す、滑らかな音を出す弓の操作、これは長年の修業が必要です。これが本当に難しい。中国の方も「二胡は難しい」とよく言います。
 一方で、自分が出したい音色を伝えやすい楽器ともいえます。演奏するとき、緊張していればその気持ちが出ます。自分は呼吸と連動しているとも感じます。
 一度だけ、中学生のころ、弾いていて楽しくなくなってきたことがありました。そのときに改めて二胡のコンサートの動画を見たり、CDを聴いたりしたんですよね。改めて、その演奏を聴いて、自分のやりたいことを再確認して、続けることができました。
 それ以外は本当に楽しくて。やっぱり自分が楽しいからここまで続けてこられました。中学校2〜3年生のときに、これからの進路を考えたのですが、「やっぱり上を極めたい」と思い、中国にある中央音楽院の附属中等音楽学校に入学しました。最初の半年くらいは通学できましたが、春節(旧正月)の時期に日本に一時帰国していたときにコロナが全世界で流行、そのまま卒業までオンライン授業となってしまいました。友人もできずとても残念でした。
 それでもこの9月に中央音楽院に進学することが決まり、今その準備を進めています。

自分の演奏きっかけに中国へ関心を
 中国の方は本当に親切な人ばかりっていうのが印象深いです。困っていたら、「何々、どうしたの」とすぐに世話を焼いてくれる人が多かったですね。すごく親切だなって思いました。
 地下鉄に乗って、宿題をやっていたら、隣の人がすごく覗いて、教えてくれたこともありました。「私は先生だから、教えてあげる」って。
 中国の方の日本人に対するイメージも悪くなく、日本人と仲良くしたいんですよ。最近、中国の若者の間で日本の文化への興味や関心が高まっています。アニメなんか、僕よりも詳しくてビックリもします。中国の若者にとって日本のイメージは結構いいと感じました。
 以前、「民をもって官を促す」という言葉を聞きました。「いい言葉だな」と思いました。
 まずは日本と中国、どちらの国の人たちも、相手のことを知って、民間同士の交流を続けることがいちばん大事かなと。相手のことを知った上で、交流する機会をどんどん増やすことが、友好関係につながると思っています。
 やはり、自分と同じ世代に中国を知ってもらいたいですね。
 まずは今の中国を知ることが大切だと思います。できるなら実際に中国に行って、感じてほしいですね。そこで得た若い人たちの糧が、将来のこれからの日中関係に響いてくるんじゃないかなと思います。
 小学生のときから二胡の演奏家を目指していましたから、「世界で活躍する二胡奏者」が夢ですね。もう一つは二胡を通じて、日中友好の架け橋になりたい。そのきっかけとして自分の二胡の演奏が役立てたらと思っています。


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