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労働新聞 2022年4月5日号 8面・通信・投稿

値上げ続きの春

売場で感じる庶民の生活苦

食品スーパー勤務・渡辺 和雄

 私は食品スーパーに勤務しています。昨年後半から毎月のようにガソリン価格の上昇が続き生活費に響いていましたが、今年1月からはさらに食品や雑貨など国民の生活に欠かすことのできない日用品が毎月のように値上げされ、家計を直撃しています。
 主原料の価格や物流費、包材費の高騰で、1月には食パンや菓子パンが9%、文具は8%値上げし、2月には冷凍食品も。アルミホイルは15%値上げ、3月はティシュとトイレットペーパーが15%、さらにマヨネーズやサラダ油、ケチャップ、しょう油と続きました。上がらない物がないぐらい目白押しでした。値上げすると客離れにつながると、値上げせずに商品の容量を減らすやり方をとるメーカーもあります。
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 あまりに値上げが広範囲に及ぶので、消費者としてはまとめ買いをすることにも限界があります。生活を守るため、庶民は以前より各段に特売商品や値下げ品を求めるようになっていて、そのような人が老若男女を問わず増えてきていると仕事柄感じています。
 私の職場では、牛乳や豆腐、パンなどは午前11時から、魚の切り身や肉類は夕方6時から値下げしているのですが、さらに「何時からは30%、さらに何時からは50%値下げになる」というようなことを毎日調べて把握し、その時間を狙って来店して買っていく人が確実に増えています。値下げ品を買うために一日に何回も来店する人、1時間あまり店内で待ち値下げのタイミングを待つ人もいます。
 また、従来は値下げ品を買うのは女性客や年金生活世代が多い印象でしたが、コロナ禍による収入減などの影響からか、1年ほど前からは以前はあまり見かけなかった作業服姿の職人や若者・学生世代など幅広い年齢層の人が男女を問わず次々と値下げ品を買い求めて集まっています。生活防衛のためには食費抑制が避けられないのでしょう。
 万引きも時々捕まえますが、以前に比べて高齢者が増えたと感じています。内容も「鮭の切り身」「菓子パン」「鶏の唐揚げ」などで、「お金が足りなくて盗んでしまった」「所持金は100円もない」と言われることもあります。高齢者の貧困問題の深刻さを感じさせられます。
 先日こんなことがありました。野菜の売場では、キャベツの外側の葉っぱをむいて捨てるポリバケツが置いてあるのですが、高齢の女性がその葉っぱをビニール袋に詰めていました。「それで餃子や野菜炒めを作るのでください」とのこと。店の決まりではあげることはできないのですが、結局は処分する物でもあり、生活のことを察し黙認して差し上げました。
 別の日には、レジで待機していると、顔見知りの老夫婦が5割引のお弁当を4個と惣菜をたくさんかごに入れて会計にきたので、「これから家族で夕食ですか?」と言うと、奥さんが「物の値段が上がったからね、明日の分の食事も買うんだ、安い時に」と言っていました。その年金生活者の夫婦は、税金は上がる一方で年金は削られているので、少しでも値段が安くなるからと、自転車に乗れなくなったので夫婦で歩いて 分かけてここに来ているとのことです。
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 また、報道もされていますが、こんなことも起きています。レジは商品を登録する「登録機」とお客さん自身が代金を支払う「精算機」がセットなのですが、支払いの際に硬貨を一度たくさん投入し過ぎて詰まってしまうトラブルが最近増えています。機械がストップしてしまうので対応が必要なのですが、お客さんに「何でこんなにたくさんの硬貨を?」と聞くと、「買い物時のおつり(小銭)を少しずつ貯めておき、郵便局のATMから入金し貯金してきたが、1月から硬貨の入金には手数料を取られるようになったので、アタマにくるのでレジでの支払いで使おうとした」とのことでした。
 郵便局(ゆうちょ銀行)では、硬貨の種類に関係なく、1〜25枚で110円、26〜50枚で220円、51〜100枚で330円と、それぞれ手数料を取られるようになりました。これまでゆうちょ銀行は国民が預けた金を企業などに貸し付けて利ざやで利益を得てきたのですが、超低金利時代なので、「庶民の預ける小銭など不要だ、預けるなら手数料を払え」ということです。
 庶民・弱者の生活は真綿で締め付けられるようにさまざまな場面で厳しくなっていると感じます。多くの人たちが生きていけない時代が既にやってきています。強者優遇・弱者切り捨てのこのような社会がいつまでも続くはずがないし、続いてはいけません。


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