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労働新聞 2022年3月15日号 5面・通信・投稿

『ぜんぶ運命だったんかい』を読んで(5)

今の社会には「準備運動」が必要

大阪府・小池 日向子

 笛美さんの著書を読んで、興味深い特徴がいくつかありました。
 一つは、笛美さんは政治への参加を呼びかける一方、政党の名が出ることに対してはうしろめたさを感じるというのです。これはどういうことなのか、笛美さんのなかでも答えは出ていないようです。
 ここからは私の推測ですが、与党政治家にはカネや癒着というダークなイメージが、また野党や野党議員には時代錯誤で何にでも反対ばかり唱えるという見方が、見えない語り部がいるかのように時代を超えて、権力の広報機関となったさまざまなメディアやそれに感化された大人から子どもたちへ脈々と受け継がれ浸透しているのではないでしょうか。その刷り込みが政治に目覚めた笛美さんに政党(特に反体制の側)に関わることに後ろめたさを感じさせていたのではないでしょうか。
 二つ目に、安保闘争のことを知った笛美さんはこう言います。「人びとは長い間運動不足なので、準備運動が必要」と。この視点は、人の持つ力を信じている人だからこそ持てるものだと思います。長く社会運動に携わる人の中には、「立ち上がらない人は勉強していないからだ」とか「そもそも人は団結なんてできっこないんだ」などと、半ば人を信じられなくなり諦めているきらいがあるように感じます。
 私は、笛美さんのような考えとともにありたいと思います。人びとは準備運動が必要なのだ、行動につながる言葉を見付けることが大切なのだと。運動をする人が人を信じられなくなってしまっては未来は真っ暗闇です。諦めの境地に至ってしまった人に人を信じてやまない笛美さんの姿勢をぜひ伝えたいと思います。
 三つ目に、笛美さんは「権力」という言葉を使います。この言葉は権力を肌身に感じたことがある人が使うようになるのだと思ます。笛美さんは権力を感じている。権力にとっては放っておいても痛くもかゆくもない運動しかしない活動家に対しては、権力はその本質(いざとなれば民衆を弾圧する)を見せつことはないと思います。しかし笛美さんはその存在をはっきりを認めています。若い女性活動家にこのような人物がいることは、社会運動にとってなんて明るいことなんだろうと感動します。
 また、笛美さんの問題提起からは取りこぼされている課題として、昔でいう成功者モデルのような安定した高収入、終身雇用の男性がそもそも激減。男性もまた、自分ひとり食べていくことがやっとの社会。日本人よりさらに苛烈に搾取される外国人労働者、自暴自棄な労働者の犯罪行為、家庭崩壊、自殺の増加など、日本の労働者や中小零細企業経営者の置かれた状況はきわめて過酷です。
 男性優位の社会構造が女性だけでなく男性をも苦しめ続けています。そのような仕組まれた男性優位や社会的性差の押し付けは、資本家を肥え太らせ守るためにつくられた仕組みであることを男女労働者が知る取り組みも必要です。誰が何のために差別を助長しているのか、家父長制を温存しているのか、男性も女性自身も気づき合い、人間の力を信じて、さらなる労働者の団結を強めましょう!(終わり)


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