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労働新聞 2022年3月5日号 6面・通信・投稿

コロナ禍で広がる子ども食堂

立ち上がる人の姿に勇気

福岡県・河野 辰雄

 新型コロナウイルスの感染拡大も現状ではまだまだ収まりそうになく、さらに感染力が高いと言われる「ステルスオミクロン」もこれから増えてくると予想され、先の見通しがまったく立たない状況が続いています。私の暮らす地域でも、いわゆる「まん防」の期限が延長され、しばらくはとても解除されそうにありません。
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 知人が肉類の卸売業兼焼肉店の従業員をしているのですが、非常事態宣言など活動制限がなされるたびに閉店休業となるため、その都度収入の道を閉ざされます。期間中何とかしのいで生活するということをコロナ禍のこの二年あまり続けています。
 今回初めて経営者から五万円もらうことができたということですが、雇用調整助成金の手続きがちゃんとなされているわけではないそうです。周囲で耳にする限りでは、たとえば高齢の家族経営者など、そもそもそういった制度があることを知らなかったり、一応知ってはいてもなかな手助けが得られず手続きを完了して助成金を受け取るというところまでいかないところも多いようです。またなかには「結局は自己都合だ」とか「カネをもらおうというのは甘えだ」などとか言われて手続き自体をしていない人もいると聞きます。逆に「コロナの協力金などでだいぶ儲(もう)かった」とホクホク顔で話す知り合いもいたりします。
 このようにコロナ禍で苦しい状況にあるという人は私の周囲だけでも相当数います。実際に私自身の親戚や友人知人のなかには、制限されるたびに失職や転職を余儀なくされたり、収入の道を閉ざされたり、あるいは否応なく重大な人生の岐路に立たされたりと、もがき苦しんでいます。
 皆、何とかその現状を必死に乗り越えようとがんばってきていますが、特に母子家庭などには行政の支援までたどり着けない、受けられないということもよく聞きます。私の周辺では、幸い仲間や友人など人と人との繋がりがそれなりにあるので、何らかの手立てを打てて少しは手助けになっていると思います。しかし社会では女性の自殺者が増えていたり、地元を中心にしたインターネット上の掲示板などで、特に母子家庭で子どものおむつやミルク、あるいは洋服、お菓子・食料品を何とか譲ってもらいたいという悲痛な声がどんどん増えてきていることからも、支援が間に合っていなかったり、置き去りにされている人も多数いることが分かります。
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 このような中、私の友人がやっている子ども食堂も通常の運営がままならない状況が続いています。感染者が増えるたびに公共の施設が貸し出しをストップするため、中止にすることが多いという状況でした。開催できたとしても以前のような会食スタイルは難しいため「居場所づくり」という意味合いの開催はできないものの、せめてもと開催できる時にはお弁当配布という形での取り組みをしています。いつもあっという間になくなってしまうということで、「たとえ一食でもとても助かる」という声をいつも聞いており、何とかできる時には子ども食堂をやろうと有志でがんばっています。
 子ども食堂については、「NPO全国こども食堂支援センター・むすびえ」による実態調査で、コロナ禍の昨年には千四十七カ所も増加し、分かっているだけでも全国で六千七カ所の子ども食堂があるという結果が出ていました。さまざまな市民運動から地域の小さな集まりまで、これだけ大きく制限されてきている状況下にもかかわらず、現状を見過ごせず、むしろコロナ禍でより厳しさを増した社会状況の中で、何とか少しでも支援の輪を広げようと子ども食堂を立ち上げている人びとがそんなにもいたのかと驚きました。
 ますますひどくなる一方の格差社会の中で、生活が困窮している人がどんどん増え、年々DVや子どもへの虐待が増えていたところに、今回のコロナ禍の影響によって貧困化に拍車がかかっています。しかし、おそらくそれぞれもさまざまに厳しい状況があるであろうにもかかわらず、それを何とか助け合おうと立ち上がる人がそれほどたくさんいるということです。
 政府によるマスクや、十万円を一時的にバラまくような単発的な対策ばかりでは根本的な解決になるはずもなく、国が主導しての対応策では本当に支援が必要な人にその手は届かず、取り残され置き去りにされ、命を絶つ者さえも多数出ているような苦しい状況が続いています。しかし、子ども食堂を続けている私の友人のように、そのことに気付いて何とかしようと取り組みをしている人の姿に勇気づけられます。
 私自身も自分に何ができるのか、そして何をすべきなのかを考え、闘う仲間たちと手を取り合ってやっていきたいと思います。


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