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労働新聞 2022年2月25日号 5面・通信・投稿

石原慎太郎評価に関して(下)

売国安倍政権の先例に

東京・菅谷 琢磨

尖閣「国有化」の発端に
 石原の三つめの罪状として挙げたいのが、彼の「尖閣諸島購入」発言が当時の民主党政権による「国有化」の契機となり、日中関係悪化を招いたことです。
 こんにちの米中対立が激化する情勢下、国有地「尖閣諸島」周辺はその最前線となっています。マスコミは度々「尖閣諸島の接続海域に中国艦船が侵入」と報道します。この周辺が常に緊張関状態に陥るようになったのは二〇一二年九月の日本政府(当時は野田政権)による尖閣諸島購入が原因です。私有地であった島を国有化するという行為は防衛上の重要な政策変更であると中国側が認識するのは当然です。
 それまで日本は中国との合意でこの問題を「棚上げ」してきましたが、それを転換するこの国有化を誘引したのは言うまでもなく当時の都知事・石原です。石原は同年四月、米国保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」の講演で「都が尖閣諸島を購入する」と発言し、その後購入のための寄附金募集を始めました。当時の民主党政権は米国や石原の思惑やその重大さに気付かず、むしろこれに乗るかのような国有化という最悪の対応をしました。
 これが日中関係の悪化を招き、中国では反日デモが頻発、日本製品の不買運動も起きました。日本でも対中感情が悪くなり、両国民を引き離す結果となりました。これ以降、尖閣周辺は常に緊張状態・一触即発の状態で、これはこんにちも解消されていません。しかしこれは「お互いさま」の問題なのではなく、あくまで日本の側からケンカを売ったがために関係が悪化したことは明確にしておかなければなりません。
 今年は不戦を誓った日中国交回復五十周年。本来は両国を挙げて祝うべきですが、今年一月に行われた内閣府の調査によると、中国に親しみを感じる人は二一%、感じない人は七九%という結果でした。特に東京二十三区では親しみを感じる人は二〇%と全国平均を下回る結果です。北京市と友好都市関係にある東京都はこれを恥としなければなりません。

横田「軍民共有」の虚構
 最後に取り上げたいのは、彼が横田基地の「軍民共有化」を掲げながら、実際には横田基地の固定化と自衛隊との「軍軍共有化」が進むなど基地機能が強化され、横田が「敵基地攻撃」の出撃拠点にまでされようとしていることです。
 東京都の西、五市一町にまたがる広大な(東京ドーム百五十七個分)の米空軍横田基地は、東アジア地域の緊張激化に伴い、その性格が変貌しています。岸田政権は今国会で「敵基地攻撃」の可能性に言及しました。横田基地は一二年以来航空自衛隊が駐屯し、常に共同作戦をしているとみられます。横田基地はベトナム戦争以降、輸送基地となっていましたが、現在ではオスプレイも配備され、周辺市街地の危険を無視したパラシュート降下訓練などを行う特殊作戦の訓練施設となっています。
 さて、石原にはペテン師の才能があったようです。彼は就任早々米軍横田基地を視察し、「半分でも米国から取り戻す」と大風呂敷を広げ、民間航空機の就航を行う「軍民共有化」を打ち出しました。これを「米国と対等の同盟関係をめざしたもの」という間違った評価がありますが、石原の意図はマスコミなどの評価とは真逆です。軍民共有の代わりに進んだのは自衛隊との共有化・軍軍共有化でした。米軍が簡単に民間との共同使用を許すはずはなく、二〇〇一年の九・一一事件以降は「テロ対策上」まったく現実離れした計画となっています。
 しかしいまだ現都政は「米軍との軍民共有」をテーマにシンポジウムを開催するなど、都民に幻想振りまき騙し続けています。その先べんをつけた石原を「愛国」とか「憂国」という言葉で評価するマスコミもペテン師と同罪です。
 その後成立した安倍政権も、差別・排外主義をあおり、勇ましい装いで米国の手先としての内外政治を行っていますが、改めて振り返ると、石原はその安倍の先例となったのかもしれません。石原の数々の悪行を再検証することはこれからの国政や都政を考える上でも教訓に満ちているのではないでしょうか。


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