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労働新聞 2022年2月15日号 6面・通信・投稿

地域から「真の沖縄連帯」を(

大阪府・西尾 慧吾

 沖縄県の名護市長選挙が一月二十三に投開票され、辺野古新基地建設反対を明言した岸本洋平候補が敗れた衝撃は大きい。しかしこの選挙結果は現地の民意が「基地建設賛成」だと意味するものでは決してない。「毎日新聞」のインタビューには「以前は移設に反対する候補を支持していたが、移設中止に向けた政府との協議は進まなかった」「辺野古移設を進める国にはかなわない」という諦念から渡久地候補に投票した有権者の声が並んでいた。
 この選挙結果は「生存権か経済的利益か」という二択を迫り、軍事植民地的支配を強める政府の醜悪さの露呈だ。選挙のPR動画で岸本候補は「辺野古は国民全体の声で止められる」と訴えた。地方自治を蹂躙(じゅうりん)する新基地建設を強行する政府に、国民皆で抗議する責任がある。
 今年は一九七二年のいわゆる「沖縄返還」(内実は「沖縄再併合」)から五十年。今ほど「沖縄の痛み」を全国で共有できる時はない。米軍基地由来のコロナ感染爆発・米兵にPCR検査すら義務付けられない日米地位協定、沖縄戦戦没者(遺族は県民に限らず全国・全世界にいる)の遺骨が染み込んだ土砂を用いた辺野古埋め立て、「重要土地規制法」による基地周辺の市民運動の監視といった問題は、日本中の市民の生存権や尊厳に関わる。政府やメディアは中国や朝鮮民主主義人民共和国への脅威論をあおり立てるが、米軍と、対米従属一辺倒で軍国化を進める日本政府の方がよほど恐ろしい。
 私の暮らす大阪は特に沖縄と似た課題を持つ。カジノのための夢洲埋立は、軟弱地盤や生態系破壊といった辺野古とまったく同じ問題を抱える。軟弱地盤の上に無理な埋め立てを行う愚かさは、二〇一八年の台風21号襲来時の関空水没を目撃した大阪の人なら容易に理解できるはずだ。夢洲整備に七百九十億円以上の税金を浪費する維新が許せないなら、辺野古埋立に九千三百億円以上の税金を浪費する自公維新も許せない。
 コロナ禍で沖縄に行きづらい今こそ、沖縄と自分の地域の課題を結び付けたい。「沖縄戦戦没者の遺骨を含む土砂を用いた埋め立てに反対する意見書」は、私の地元・茨木市議会で昨年六月全会一致可決されたが、意見書運動は全国展開し、昨年末までに沖縄県内外合計百七十八、日本の全自治体数一割超の自治体で可決された。また、私も加わる「総がかり行動いばらき実行委員会」は、米軍関係者への検疫法適用など「日米地位協定抜本的見直しを求める声明文」を首相官邸宛に郵送した。このような地域運動を通した「真の沖縄連帯」を育みたい。


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