ホーム党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2021年12月5日号 6面・通信・投稿

人件費削減のしわ寄せで過重労働

団結し人員補充実現させたい

 コロナ禍で昨年四月から数回にわたり発令された緊急事態宣言も九月末に宣言解除となった。だがこの間の「営業時間短縮」などの影響で外食業界は経営的にダメージを受け、そこで働くパート・アルバイトの労働者は解雇や収入減など大きな被害を受けた。
 そんな中でマイナスの影響を受けなかった業界の一つに食品スーパーがある。外食産業が「時短営業」で午後八時に閉店となる中、スーパー業界全体では八時以降の来客点数が五%以上アップ、その結果毎月の売上高・営業利益・経常利益が右肩上がりに。
 私が働く食品スーパーAも、今年の決算で株主に配当金を増額配当したくらい儲(もう)かっている。まさに棚からぼた餅とはこのことだ。では、来店客数が増加し入荷する食品量も増え、今までより忙しくなった中で、現場を支えている労働者も株主と同様に好待遇となったかというと、そうではない。店長は、人件費削減のため海産部門の社員一人を転勤させ、売場作業スタッフ、チェッカー(レジ担当)からも人員削減すると言っている。
 しかし、今でもギリギリの人員で仕事をこなしている各部門のスタッフからは不満の声が出ている。チェッカー部門では欠員の補充はなくフル稼働で仕事をこなしているが、五〜七時間と長時間に及ぶ立ち仕事で多くのスタッフは腰やひざの痛みに耐え、また腱鞘(けんしょう)炎で腕を痛めながらも仕事に誇りをもってがんばっている。
 先日、私の部門でも三カ月前に一人辞め、さらに腰痛で一人が一カ月前に退職した。すぐに店長に欠員募集を要求したが、いつまで経っても補充がない。少人数で何とか仕事をこなしていたが、その後何週間経っても新人が入らないので、「求人募集はどうなっているのか」と不満の声が出始め、先日の勤務開始前ミーティングで私が店長を問い詰めると、「実はまだ募集をかけていない」との返答。
 店長の説明では、先日の店長会議で担当部長から「さらなる人件費削減と『働き方改革』で乗り切れ。作業効率アップのため、自動車最大手のトヨタの労務管理方式を取り入れた『トヨタ式カイゼン』を推し進め、パート・アルバイトの人員を絞り込み、複数の作業を習得させ、かけ持ちでフル稼働させる。作業のムラがムダを呼ぶ。時間ロスの徹底排除」と、より徹底化の指示があったとのこと。
 その場で同僚たちが疲れと怒りから店長に「欠員で仕事量は増えたが時給は変わらず、残業も認めず時間内で仕事を終わらせろ、ではやっていられない」「これで仕事が回るのか」「お客様のためいい売場にしたいとがんばってきたのに、裏切られた感じだ」と、口々に詰問した。
 店長から「今いる皆の雇用を守るため今後退職者が出ても求人せず『働き方改革』でやりくりする」との欺瞞的説明があったが、当然皆納得せず、普段はあまり会話しないBさんまで「募集しなかったの? 欠員でも閉店前に終わらせようとトイレも行かずがんばったのは何だったんだ」と怒りをぶちまけていた。
 店長は顔をひきつらせ、その日は「ミーティングは終了」となったが、翌日から「時間的に忙しい」という理由で対面でのミーティングは急になくなり、「本日の業務指示書」という書面での指示に変わった。労働者がまとまり怒りの声を上げた時の怖さから、皆が集まり意見を言う場を廃止したのだ。
 仕事を掛け持ちで働く労働者は、生活苦でもがんばっている一方で、資本家はよりいっそう収益を得ようと下級職制(店長)を通してさらなる人件費削減=労働強化を要求してくるだろう。欠員のまま現状の仕事を続ければ「人件費削減の数値目標に近づく」と会社と店長がほくそ笑むだけで、現場で働く労働者には労働強化だけだ。労働者と資本家の利害はコインの表と裏の関係だ。
 今後も、欠員分の新規採用をさせるよう粘り強く要求し実現をめざすとともに、職場の同僚との対話を重視して団結を深めていきたい。(スーパー非正規労働者・M)


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2021