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労働新聞 2021年11月15日号 6面・通信・投稿

「半導体不足」で休業続き
給料減、説明もなく不安な日々

業界の状況、自ら調べたい

自動車工場労働者 佐藤 良則

 私は大手自動車の下請会社で働いています。
 夏以降、会社が「休業」になることが増えました。部署により休業日数は異なりますが、八月は数日間でしたが、九月は一週間以上、十月になってもその状態が続いています。「出社しても掃除しかすることがない」という部署もあると聞いています。
 親会社は、地域経済に与える影響を恐れているのでしょうか。工場が稼働している時でも、工場のラインの速度を落としています。夜勤休業に加えたこの措置で、生産ペースは非常に落ちています。製造する車種も、いわゆる「売れ筋」に絞り込んでいます。
 製造台数が少なくなった上に車種が絞り込まれているので、「売れ筋」でない車種の部品を製造している下請けに大きな犠牲が押し付けられていることは想像に難くありません。私のいる会社は売れ筋車種の部品を複数扱っているので、まだマシのようです。
 会社が言うには、海外での半導体生産が不安定なだけでなく、検査・物流などの分野での感染拡大が原因とのことです。
 現在、自動車には各種半導体が多数搭載されています。モーターの制御などのほか、並走する自動車の接近を感知するセンサーなど、さまざまです。電気自動車(EV)化の流れが進み、搭載される半導体数はさらに増えているようです。
 私の働く現場で、半導体を組み込む作業が行われているわけではありません。それだけに「半導体不足で…」と言われてもよく分からないのが本音です。
 同僚たちも、内心では不安を抱えているのだと思います。それでも、組合内の議論では大きな問題になってはいません。これは、国からの雇用調整助成金制度によって、休業中の給与がほぼ一〇〇%補償されていることが影響を与えていると思います。
 とはいえ、現実には給料に影響があります。月に十日程度あった夜勤は、二〜三日に急減しました。残業はほぼゼロです。これで、給料の手取りは月に五万円程も減ってしまいました。
 また、会社の操業日数は「親会社次第」なので、毎月のシフトがどうなるかは直前まで分かりません。私たちにとっては予定が立ちにくいので非常に困りますが、シフトを組む上長も調整に追われて難儀しているようです。
 上長は夜勤が特定の人に偏らないよう「工夫」しているようですが、実際には、再雇用の高齢者が優先的に休みを取らされています。また、コロナの感染リスクが高い、電車通勤の労働者ほど休みが多いように思えます。  聞くところでは、「半導体不足」が解消するにはもう一〜二年かかるようです。
 しかも、現在の雇用調整助成金制度はコロナ禍による特例措置(給与の一〇〇%、上限一万五千円)が施行されています。政府は来年の三月にもこの特例を停止するつもりのようですが、それまでに半導体不足が解決するメドはありません。
 ということは、会社は雇調金本来の助成額(中小企業で給与の三分の二、上限八千三百三十円)しか受け取れなくなります。会社には「困った」事態になるわけで、この犠牲が仲間たちに押し付けられないか、警戒を怠ることはできないと思います。
 当面の「半導体不足」はいつになったら解消するのでしょうか。
 自動車業界をめぐっては、国内は、人口減少による需要減少と若者の自動車離れがあり、中長期的にはEV化やカーシェアの普及、さらにカーボンニュートラルの問題があります。先日の記者会見で、豊田・日本自動車工業会会長(トヨタ自動車社長)が「カーボンニュートラルは雇用問題」と述べていました。
 これらが今後どのように影響していくのか、会社や労働組合からの説明はまったくありません。私自身が勉強して、状況を仲間に説明できるようにならなければと思っています。


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