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労働新聞 2020年12月5日号 8面・通信・投稿

国の農家支援策は的外れ

直接給付や支援必要

徳島県・花き農家 沢田 昭二

 これまでも何度かこの欄に投稿させてもらいました。花き栽培の家業を継ぎ四十年以上になります。今は妻と長男の三人で経営していますが、売上・収入は年々減るばかりです。
 夏頃、私の父が誤嚥(ごえん)性肺炎を患いました。コロナではなかったものの、その後施設に入所を余儀なくされました。これまでは週一での見舞いができましたが、感染の広がりから十二月からは面会ができなくなります。高齢者がいるご家族で同じような境遇にある人も多いと思います。三月からのコロナ禍の一年、不安や困惑の年でしたが、あらためて私たちの生き方を見つめ直す機会にもなった年だったと思います。米国の衰退もここまできた。世界は大きな変わり目にきているようですね。
 さて、花き農家の経営状況ですが、ご多分にもれずさらに厳しくなっています。三月からのコロナ拡大と「自粛」要請で、学校の卒業式や入学式、企業の春のイベントなどがほとんど中止となり、個人の贈答用も法人向けも需要がほとんどなくなりました。私の家ではギフト系のバラや胡蝶蘭なども育てていますが、高価なものほど値が下がり半値近くになりました。見通しがたたず三月末には夏用の花の植え付けを五割から九割控えなくてはならなくなりました。
 六月ごろから少しずつ出回るようになりましたが、花農家が考えることは同じで、みな生産量を減らして、単価はなんとか維持しています。今はクリスマス用のポインセチアの出荷真っ最中ですが、単価を維持しながらおおよそ出荷量は三割減です。今は何とか続いています。第三波の感染は次第に広がっているので、この先また緊急事態宣言とならければいいのですが…。
 花き農家のなかでも切り花はもっとも打撃を受けたようです。そもそも花は一九八五年に関税が廃止され、昨年は約十三億本の切り花が輸入されています。ハウス内でヒートポンプを使っている農家は電気料金だけで五百万円近くかかるといいます。重油の方が割安なのでうちでは重油を使っていますが、相場の変動が大きいのが難点です。また切り花の場合は品質を保つためにもヒートポンプを使います。競合する韓国では農家が使う電気料金は日本の十分の一で、そもそもコスト競争には到底打ち勝てない状況があります。そこにコロナで大幅な需要減で切り花は春先に暴落しました。
 そこで日本花き生産協会では、稲作時などの農繁期だけ使える農事用電力を花き農家も使えないか農水省に要請をしましたが、大手電力会社の価格引き下げが電力業界の競争を妨げるという理由で却下されたとか。花き農家についても現場の農家に即した国内農業を維持・発展させるための政策がやられているとは到底思えません。
 私の収入減の穴埋めに、政府の個人事業主向けの持続化給付金と販売促進や経営維持のために農水省の支援メニューから該当するものがいくらか活用でき、急場をしのぐことができました。しかしこれらも一時的なもので、販売促進でもインターネットの活用などが前提となっています。
 こうした支援メニューには「農産物輸出支援」なども入っているのですが、自粛要請のさなかでのGoToキャンペーンの議論同様、的外れで間抜けな感じがします。
 畜産や酪農の経営や外国人労働力を前提とした野菜農家などはいろいろと困難を抱えていますが、手が届いていません。政府は販売促進ありきの支援に偏りすぎています。直接給付・支援で農家を支えることがなければコロナ禍のなかでさらに国内農業が廃れると思います。
 寒くなってきました。心穏やかに、休養もよくとって、このコロナ禍を乗り切っていきましょう。


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