ホーム党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2020年4月5日号 通信・投稿

「コロナ対策」特別融資は虚構

安倍政権はデタラメだ

神奈川県・森野 熊三

 新型コロナウイルス感染症でもろに被害を受けるのはやはり経済弱者だ。非正規雇用で働いている人、日給月給で雇われている人の中には、三月の給与支給日にがく然とした人もかったのではないか。「貯蓄ゼロの人」なんてよほどの落ちこぼれと思っている政治家や役人にこの国は任せられない。

「画期的」とは程遠い内容
 私は中小零細企業の経営者から相談されることが多いので、国の「特別融資」について調べてみた。  経済産業省はホームページに「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」と題したリーフレットを掲載している。A4版で四十二頁にもわたる内容で、(1)日本政策金融公庫、(2)商工組合中央金庫、(3)信用保証協会、(4)商工会議所、(5)ハローワーク、(6)社会福祉協議会が窓口となって豊富な貸付メニューが用意されている。
 これらをそれぞれ検討する。(1)政策公庫の場合、最近一カ月の売上が前年又は前々年同月に比べて五%以上減少している個人・企業に最大で六千万円まで無担保・実質無利子で貸し付けするとのことだが、実際にそんな額を貸し付けるはずもない。仮にそれだけ収入が落ち込んだ事業だったら資金注入だけで再生が図れるとは考えにくい。「最大で六千万円」は看板でしかない。
 実際に政策公庫某支店に行ってみると、玄関前に「コロナ対策融資の受付は二階窓口へ」と大書してあり、上がっていくといつもと違って四組もの希望者がいた。簡単に話を聞くと申込書を渡された。後日申し込みに行くと「いずれ面接日を伝える」と言われた。二十日くらい先の融資希望日を告げると「ギリギリですね」と。融資可能性も面接予定日も答えてはくれない。
 (2)の商工中金は、最大三億円と標榜(ひょうぼう)しているが、いったいどんな事業計画を示せばそんな資金を借りれるのか。また借りてもまともに返済できるのか。まず現実的でない。もともと商工中金は組合に属している企業がその組合を通じて取引する原則であり、中小業者が飛び込みで行っても可能性は低いのでないか。
 (3)保証協会は、資金を出すのは民間金融機関であり、その審査は政府が旗を振ってもさほど緩くはならない。しかし、実はここで暗躍するブローカーが存在して、代議士秘書だとかの名を借りたりして、融資実行されると同時に多額の手数料を持ってゆく仕組みになっている。
 (4)は政策公庫が商工会議所の経営指導を受けた企業に貸し付ける特別枠ということになっていて、これをマル経融資と言っているが、実質的には経営指導などできるはずもなく、六カ月の入会実績があればいいだけで、六カ月さかのぼって会費を納めれば入会日を半年前にずらすことも行われている。
 (5)のハローワークというのは雇用調整助成金といってコロナウイルスの影響で事業活動の縮小を余儀なくされた事業者が労働者の雇用維持を図った場合、その賃金の一部を助成する仕組みだが、その実もともと大企業の賃金補助の意味合いが強いもので、某政令市のハローワークでは今回の制度を知らない職員もいて、到底真剣に対処しているとは思えない状況がある。
 (6)は個人もしくは個人事業主を対象として休業の場合は十万円もしくは二十万円限度、失業の場合は六十万円(二十万円×三カ月)限度で各地区の社会福祉協議会(社協)を窓口として貸し付けるもの。こんなわずかな金額でさえ給付ではなく貸付とはあきれる。
 以上のように、どれも元来あった制度に「コロナ対策」と銘打って枠をいくらか拡大しただけで、「画期的な対策」と呼べるものではなく、まさに安倍政権の「やってる」ポーズでしかない。本当に困窮している業者や庶民への助けにはなりそうもない。

デタラメな架空対策が多い
 国のやる「特別融資」政策などというのはデタラメなものが多い。恥を承知で告白するが、実は私自身がそれを体験した。
 リーマン・ショック後の金融円滑化法による中小企業特別融資は、政府が銀行や大企業にばかりテコ入れしたことの不満をガス抜きするため、保証協会に一社五千万円の枠をつくらせ、どんな会社でもかまわず融資、その多くが焦げ付いた対策である。
 その当時、私の経営する土木弱小会社も借金苦にあえいでいたため、某ブローカーの話に乗り、建設機械購入の名目で五千万円を申し込んだところ、わずか一週間で簡単に満額が振り込まれた。某有名代議士の秘書に二割の手数料一千万円を払い、残金であちこちの借金を払い、その後毎月約六十万円ずつ三年ほど返済していた。しかし、国の方針転換で山奥のクマやタヌキしか通らない山岳道路は不要とされ、仕事が立ち消えて経営は破たんしてしまった。
 その後しばらくして、私の不在時に自宅に保証協会の担当が来て、事情を知らない妻に苦情を言い、「そのカネで奥さんも生活していたのだから支払いに責任を持ってください」と告げて帰ったというので、「保証人になっているわけでもない人間にそんなことを言うのはとんでもない!」と保証協会に行って抗議したところ、毎年一回残高の請求書が送られてくるだけになっている。
 コロナ不況に対する融資政策が、前のようなデタラメな架空対策の繰り返しなのか、そうでなく実体を伴わったものに今後なるないのか、しっかり見守りたい。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2020