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労働新聞 2020年4月5日号 通信・投稿

熊本地震から4年

本当に必要な復興忘れられている

熊本県・松本義男

 この四月で熊本地震から四年になります。。
 住んでいた家は地震で全壊し、三カ月間避難所や壊れた家に留まった後、県が借り上げた「みなし仮設」の賃貸住宅暮らしが三年九カ月。この三月末にようやく「復興公営住宅」に引っ越すことができました。
 震災からの復旧・復興で、県は重点課題として十項目を掲げ、第一番目は「住まいの再建」と「災害廃棄物の処理」でした。その住まいの再建で、自力で再建できる人も決して楽ではないですが、低所得者にとっては自力の再建の目途は立ちません。県内十二市町村で約千七百戸の復興公営住宅の整備が進められ、この三月末にようやくすべての公営住宅の建設が完了したというわけです。それでも、自力再建待ちの人たち三千人くらいがまだ仮設住宅に留まっています。空き家が増えた仮設住宅団地では「不審者」が出入りするなどの不安の声も出ています。
 確かに、倒壊した家々は撤去され、多くが更地になり、そこに真新しい家も建てられてきていますから、見た目は地震の跡は目立ちませんが、まだまだ復旧・復興は道半ばというところだと思います。
 しかし、まさか自分がこのような大被害に遭遇するなどとは、それまで夢にも思っていませんでした。東日本大震災や福島原発事故も「大変だな」とは思いながらも、どこか遠いところの出来事という感覚でした。自分の体験を通じて初めて、こうした災害の大変さを実感しました。そして非常時に政府や行政が何をするのか、いろいろ考えるものがあります。
 地震直後には最大十八万人以上が避難し、約八千六百棟が全壊、約三万四千棟が半壊、多くの公共施設が被災、交通網が各地で寸断されました。四月十四日の前震と十六日の本震で震度七が二回、さらに震度六強が二回、六弱が四回、震度五強と五弱も加えると合計二十七回の強い地震が起こった。有感地震は一年以上にわたって四千回を超え、今も思い出したように起こっています。震源となったのは布田川断層帯と日奈久断層帯ですが、日奈久断層帯には「割れ残り」があって、地震は過去の話しではなく、今後も強い地震がいつ起きても不思議ではありません。
 県が重点課題としたのは、住宅再建などのほか、阿蘇へのアクセスルート(道路・鉄道)の回復、熊本城の復旧、益城町の復興まちづくり、被災企業の事業再建、被災農家の営農再開など、県民の生活、営業・営農に関わるものは当然です。さらに「創造的復興」と称して「大空港構想(熊本空港)の実行」「八代港のクルーズ拠点整備」「国際スポーツ大会(ラグビー、ハンドボール)の成功」が掲げられました。大空港構想では空港の民営化と鉄道の延伸が進められています。「ちょっと違うんじゃないかな」「誰のためにやってるの」と多くの人が疑問を持っています。クルーズ船はコロナ騒ぎで入港ゼロです。
 大きな災害があると、必ず「創造的復興」のようなことが掲げられ、どこでも大規模なインフラ整備が行われますが、本当に必要なことが忘れられているように思います。
 昨今の自然災害の多発は、地震だけではなく、温暖化による自然災害リスクの増大で台風の大型化や集中豪雨など、毎年日本のどこかで起こっています。世界各地でも頻発しています。さらに南海トラフ巨大地震や首都直下地震も確実に起こるのですから、どうやってそれに備えるか、起こった時に何を優先するのか、戦略的な備えはまったく不十分だと思います。確かに防災計画のようなものは机上の計画としてはあるでしょうが、実際役に立つのか。それは政府の姿勢にかかっていると思います。
 地震直後には九州各県をはじめ周辺自治体からの応援がありました。膨大な人数のボランティアが暑いさ中に支援をしてくれました。大災害はそうしたことを必要とします。どうしても政府や県の姿勢は逆の方向を向いているようにしかみえません。
 いま、新型コロナウイルスの感染爆発と終息の見えない広がりで、世界はリーマン・ショック以上の、資本主義の歴史上かつて経験したことのない危機に直面しています。
 わが国・安倍政権は、欧米諸国をはじめ他国と比べても場当たり的な貧弱なコロナ対策しか打ち出せず、見通しもなく右往左往するばかりです。開催のあてもない東京五輪にしがみついて、膨大な経費と人的資源をさらにつぎ込もうとしています。コロナ対策には一刻の猶予もない非常時なのに、大企業の方ばかり向いて、直接打撃を受けている飲食業など零細事業者には「自粛」ですからといって何の補償もせず営業を続けさせ、コロナウイルスの蔓延を野放しにしている安倍・自公政権の姿勢は、本当に国民の生命と生活を守ろうとしているとは思えません。


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