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労働新聞 2020年2月15日号 通信・投稿

小さな一歩が自信に

劣悪な労働環境変えたい

運送労働者・山城 正弘

 いま世界では新型コロナウイルス肺炎が猛威をふるっていますが、今後の推移いかんでは日本経済や私たちの生活にもさらに大きな影響が及んでくるのではないかと思っています。
 私は前の職場で定年を迎え、現在は生活のために運送業界でトラックドライバーとして働いています。日常の勤務は基本的にはルート配送で、ウイスキーや日本酒、あるいはジュースなどの飲料の運送業務です。
 職場は孫請けの零細企業で、六十歳以上の労働者が大半を占めています。「危険・きつい・帰れない・給料が安い」という4K業界ですから、若い人には敬遠されます。朝六時三十分に出勤し、帰りは早くて午後七時、遅い場合は九時を過ぎます。これまで四十数年間勤務した前の介護職場ではだいたい労働時間が一日七時間半でした。夜勤は月に三、四回ありましたが、今度の運送会社では十二時間も働くというか拘束されるのは当たり前のことになっています。
 職場の他の労働者と話す機会は退社時ぐらいですが、不満は相当あるようです。それで機会を見つけて交流の場をつくれればと思っていたところ、先月の全従業員が参加した新年会で、ほろ酔い気分で社長に不満をぶつけてみました。すると他の労働者からも会社への注文や不満があちこちから上がり、社長も困惑していました。
 そこで別の機会に、ささやかな抵抗ですが、社長に「ここは何時間働かせると時間外手当がつくんだ」と直接談判しました。そうしたら社長は「ちょっと待って下さい」と言って考え込んでしまいました。社長も雇われ社長ですから、「あなたが仕事から帰ってきたら説明をします」という一幕がありました。結局、賃金担当者に説明を聞きに行ったみたいです。私が仕事を終えて帰ってきたら、「ちょっと説明します」とパソコンを開いては話し始めました。
 だだ、その「説明」もデタラメだなあと思ったのが実際です。「時間外手当を支給している」というのは、計算ではそうなるのですが、ただ会社はさまざまな手当を付けてごまかしているんです。
 具体的には、一日の日当はいくらと決まっており、その日当を各手当に振り分け、時間外手当の記載はありません。これが実際の給与明細です。それを元請け会社の管理職の方に話をすると、「ブラック企業ですね」との返答が返ってきました。
 また別の機会に「就業規則を見せて下さい」と言ったら、社長がどうしたかというと今度も「ちょっと待ってください」と言って金庫に行くんです。大きな金庫があって、そこから就業規則を出すんです。私はビックリしました。「これが就業規則です」と渡されたので、私はその就業規則をさっさと会社のコピー機でコピーして、従業員が休憩する部屋に皆が閲覧できるように設置して帰宅しました。そして家に帰ったら、その場面を見ていた配車係の人が電話してきて「さっきコピーしていたでしょう。そのコピーした書類はどうするんですか?」と言います。「コピーした書類は皆に見てもらうために休憩室においています」と言ったら、「ああ、それならいいんですけど」と。労基署にでも内部告発されるとでも思ったのでしょうか。
 また職場では、年次有給休暇を積極的に取るようにしています。当然の権利なのですが、そう思わない従業員が多く、当初は珍しがられたのですが、今は年休を取る人が増えてきました。ささやかな行動ですが、私の行動を見てくれている仲間がいることに元気付けられています。とりあえずは一歩前進です。
 流通業界でトラック輸送は九〇%を占めています。その中で中小企業が七〇%以上を担っています。いつも運転しながら思うのですが、このトラック運転手たちが全部ストライキをやったら日本の経済はすぐマヒすると思います。労働者の強みです。
 いまの経済状況は全世界的に大変な危機を含んでいますので、どこから火がつくか分かりません。資本家だって恐れている時代ですから、われわれも気を引き締め、時代を見据えていかなければと、いまは長時間労働をしながらがんばっています。


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