ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2020年2月5日号

子ども食堂を続けて思う

助け合える社会の仕組み必要

埼玉県・前野 良子

 私は一年半ほど前に「労働新聞」に子ども食堂を始めた経験を投稿しました。その時「私たちの子ども食堂は、単にご飯を安く食べてもらうだけでなく、苦労している人が助け合い、励ましあうコミュニティ食堂なのかもしれません」と書きました。
 その後も子ども食堂の活動は広がり、テレビでも報道され、注目されるようになってきました。活動が広がるなかで、私たちの視野も次第に広がり、今の社会の実際の姿や問題点も見えてきました。
   *  *  *
 皆さんは「アスポート」というNPO団体があるのをご存じでしょうか。その団体は学習支援の活動をしています。貧困のために学校にいけない、あるいは給食費が払えないのが嫌で引きこもったりする子どもたちは、授業についていけなくなり学力が低下し、それが次の世代の貧困につながる…そうした悪循環を少しでも防ぐため、生活保護を受けている家庭の子どもたちに勉強を教える活動をしているのがアスポートです。引きこもりがちでなかなか外に出てこない子どもたちを家まで迎えに行って勉強を教え、勉強が終わると食事を用意して食べてもらい、家に連れて帰ります。
 その団体の活動を知ったこともあり、私たちの子ども食堂にも学習コーナーをつくり、元教師のスタッフに宿題や勉強を見てもらうことにしました。とはいえ、私たちの子ども食堂は楽しく食事してもらうことをいちばん大切にしています。なかなか学習支援までは手が回らないのが実情です。
 また、ともかく生活保護を受けている家庭の子どもにも子ども食堂に来てほしいと、「私たちのチラシを生活保護の家庭に渡して欲しい」と市役所担当課にお願いしました。「考えておきます」という答えで、まだ渡してもらえていないのです。組織の縦割りなのか、あるいは行政にそれができない仕組みがあるのか、疑問に思い他の自治体を調べてみると、近隣の自治体では行政の方から「チラシをいれさせてほしい」と要請があったということです。私たちの市でなかなか対応しれず、残念で仕方ありません。
 子ども食堂はコミュニティの場所です。来てくれている子どもには、なかなか教室まで行けず保健室登校になっている子どもも来ています。その子も友だちとにぎやかに食事をして帰っていくのです。こういう小さな取り組みを通じて行政の問題点も浮かび上がってきます。応援している地方議員さんの一般質問を傍聴していますが、まだまだ行政の動きに関心のない人が多いように思います。自分の町は自分たちでつくっていくという感覚が生まれにくい市なのかとも思います。職員の人は一生懸命やっていて忙しそうですが、基本的に仕事を増やさないという暗黙のルールがあるのかもしれません。
   *  *  *
 この不登校の延長とも言える引きこもりの問題は深刻です。私は実母と同居していた夫の両親を介護していました。その経験から介護している人を支援する団体に所属し、介護をしている人にひと休みしてもらうサロンを開いたりしています。その集まりでもよく出てくる話題なのですが「八〇五〇問題」です。引きこもりの五十歳の子と八十歳の親が親の年金で暮らしているというような状況を象徴的に表した言葉です。
 引きこもりの子どもが不登校のまま家にいて、就労年齢になっても親が年金で面倒をみていたり、親の介護のため仕事を辞めて介護して、介護がひと段落しても社会復帰が難しくそのまま引きこもってしまうなど、いろいろな形で引きこもりが継続してしまっています。
 市にも子ども若者支援センターがあり、相談を受け家から出るための支援をしています。しかしその支援は三十歳代までで、四十歳になった時点で支援は切れてしまいます。介護離職した四十歳以上の人はどこにもつながりがなく就労支援もありません。
 また、就労しても不安定な雇用で「自分が社会から必要とされていない」と思う若者が増えているのも確かだと思います。家族に誰かが引きこもっている人がいたら、そのことはなかなか人には話しにくいと思います。精神的な病のこともあるかもしれませんが、現代の社会の仕組みが助長させているように思えてなりません。
   *  *  *
 小さなコミュニティですが、子ども食堂に来てくれているいろいろな子や仕事帰りで自転車に子ども二人を乗せてきて「ここがあってほんとに助かった」と言って喜んで食べてくれるお母さんたちとの触れ合いを通じて、皆で寄り添い助け合っていかないと社会は成り立っていかなくなるのではと思います。
 子ども食堂という点の問題が社会のいろいろな問題とリンクしていることを実感します。社会の仕組みを変える必要があるように思います。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2020