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労働新聞 2019年11月5日号

消費者、中小事業者
そして労働者の敵“消費税”

税率引き下げではなく
「廃止」を!

東京・国分寺 保

 十月から消費税率が一〇%に引き上げられた。原材料やエネルギーの高騰、天候不順等によって次々と値上げが強行される中、増税によるさらなる値上げは私たちの生活を直撃するばかりか、消費を冷え込ませ日本の経済に暗雲をもたらしている。

消費税は消費者が納める「間接税」ではない
 消費税はその名称から、われわれ一般消費者が買い物をする際に支払うべきものと思われがちだが、そうではない。消費税は、企業・商店などの事業者が支払うもので、事業者はこれを消費者価格に上乗せすることができるため、われわれはこの上乗せ分を物価の一部として支払っているのだ。
 だから消費税は消費者が支払う間接税ではなく、事業者が支払う直接税に類する。

大企業と金持ちのために導入
 一九八九年に消費税を物価の三%で導入して以降、政府は財界の要求を受け、高額所得者と大企業を優遇するために、法人税率と所得税の最高税率を大幅に引き下げた。消費税はその後三%から五%に上がったが、法人税と所得税を減税したため、国の税収は激減した。
 いくら消費税を上げても、大企業や金持ちに大規模な減税を行っていては焼け石に水。こうしてできた財政赤字を埋めるため、政府はさらなる消費税率引き上げ(八%)で、金持ちでない一般国民から搾り取ってきた。
 法人税は利益に対して課税されるもので、利益のない赤字企業は対象外。しかし消費税は、売上から経費(仕入れ原価等)を差し引いた、いわゆる「粗利」が対象とされるので、赤字であっても課税されてしまう。赤字の中小企業、小売店にとってはたまったものではない。

輸出企業に巨額の還付金
 売上に対して課税される消費税は、通常売上額が経費を下回るはずがないことから、すべての事業者が支払わされるはずである。しかし、例外があった。輸出企業である。
 消費税は日本国内での売り上げのみを対象としており、輸出による売り上げに対しては税率〇%、実質的に非課税である。輸出が主で国内の売り上げが経費より少なければ計算上納税額はマイナスとなり、そうした企業は消費税を国に納めるのではなく、逆に国から「輸出戻し税」という名の還付金を受け取るのだ。ちなみにトヨタ自動車は、税率八%の二〇一八年度に、約三千七百億円の還付を受けている。おかげでトヨタ本社のある愛知県豊田市の税務署は、毎年赤字だそうだ。消費税納税総額の約二〇%が、こうした還付金に使われているという。
 消費税は元々フランスの国策会社「ルノー」が経営悪化した際に、その救済策としてフランス政府が考え出したもので、その成り立ちからして輸出企業を守るためのものであり、決して福祉が目的などではない。

労働者への影響
 消費税は売り上げから経費を控除した額に課税されるが、この経費に人件費は含まれない。つまり人件費は、課税対象である。これに対し派遣や請負などの、いわゆる雇用によらない労働者の賃金は「物品費」という扱いになり、控除の対象に含まれる。納税額を少しでも下げたい事業者にとって、正社員やパートなどの直接雇用よりは、派遣や請負といった「物品費」扱いの労働者の方がはるかに都合よく、消費税が続く限りは、不安定で無権利な「雇用なき労働」が職場にはびこり、安倍政権の「働き方改悪」を促進し、雇用の空洞化にますます拍車がかかることになる。

 消費者、中小事業者そして労働者の敵ともいうべき消費税に対しては、税率の「引き上げ反対」や「引き下げ」を要求するのではなく、明確に「廃止」を訴えるべきだ。


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