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労働新聞 2019年7月15日号

米中対立の余波を実感

 倉庫はまさに経済情勢映す鏡

熊本県・荒田 敏彦

 私は地方の営業倉庫の事務所で働いています。私の住んでいる地域の営業倉庫の状況を書いてみたいと思います。
 昨年末頃から、私の働いている倉庫に限らず、地域の倉庫は満床の状況が続いています。倉庫に商品が入っても出荷せず、そのまま置かれている状況が続いています。倉庫が商品でいっぱいだと言うと「倉庫会社が儲(もう)かり、働いている人も給料が増える」と思われるかもしれませんが、実際のところはそうではありません。
 営業倉庫は、商品を受け入れ・保管・商品を出荷し、その作業ごとに料金を計算しています。営業倉庫の基本的な料金の仕組みは、保管料(だいたい十日を一期として計算)と荷役料(商品の出し入れのときの作業料)で成り立っています。その他にも料金はありますが、メインの料金はこの二つです。通常は短いサイクルで商品の保管・出荷が行われるので、料金は保管料が低く、荷役料等の料金は高く設定されています。
 商品が出荷されず滞留している状況だと、倉庫料金は低い料金の保管料のみの構成となります。保管料は、地域の状況にもよりますが、私の働いている会社では、コストに見合うかたちで決められているので、倉庫の中の商品がいっぱいでも、あまり利益が出ていないのが実状で、働く人の給料も増えないのです。
 私の働いている倉庫でいっぱいになっている商品は、主に建設用の車両に取り付ける部品、化学品の原料です。用途がどのようなものかは漠然としか分かりませんが、建設用車両は主に外国向けのもので、中国との引き取りが止まっているか遅れているため、工場のラインが止まっていることによるものです。化学原料は液晶製品の原料で、国内向けだけでなく輸出用もあって、国内・国外とも工場の生産ラインの稼働が縮小されていていることによるもののようです。
 商品が動かなければ商品の運搬をするトラックの運転手の収入にも影響が出ると思います。トラックの運転手は契約社員が多く、物を運ばないと収入が増えません。このように、さまざまな関連産業への影響は、今のところ大きく顕在化してはいませんが、そう遠くないうちに色濃くあらわれてくるでしょう。
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 世界で一、二を争う米中二大国の対立は世界経済に大きな影響を投げかけています。わが国経済もその影響を大きく受け、工場の生産ラインが止まるか、生産を抑えている状態です。先述の私の地域の営業倉庫のように、倉庫は貨物が出荷しないまま満床に近い状況が続いています。日本経済も今後大きく落ち込んでいくことは確実と思います。
 米国が貿易で中国に圧力をかけ関税を引き上げたことにより、中国の対米輸出・海外向け輸出が停滞し、中国国内の生産が縮小、中国経済が低迷しています。米国が仕掛けた米中貿易交渉は、多少の妥協はあったものの、G20大阪サミットでも解決に向けての前進はないままでした。
 世界を混乱に陥れている米帝国主義は、「米国第一主義」を掲げ、米国内の矛盾から米国民の関心をそらすことが目的です。世界が混乱しているなか、安倍政権・わが国支配層は、対米従属路線を強めています。元号が変わった最初の国賓として、トランプ大統領を招き、「強固な日米同盟」を演出したことにそれがあらわています。
 日本の経済・外交は、米国に運命を委ねるのでなく、自主的・平和的に展開していかなければならないのですが、対米追随に終始する安倍政権に、わが国大企業・財界も不満を強めていると思います。優位なはずの統一地方選挙で取りこぼしが目立ったことにそれが如実にあらわれていると思います。
 安倍政権は、元号が変わったことであたかも新しい時代が到来したかのようにマスコミを利用して宣伝していますが、その化けの皮はとっくにはがれていると思います。
 参議院選挙が行われますが、野党はわが国が直面している米中関係他外交・経済上の諸問題では安倍政権の政策を追認するだけです。その影響を話題にすることなく、ありきたりの政権批判するばかりで、わが国存立の根本に触れようとしません。これでは安倍政権の引き立て役を演じているとしか思えません。
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 内外情勢が混沌としています。その一つのあらわれとして、地方の営業倉庫のものが動かないことを書きました。通販の商品を扱う倉庫はもう少し物が動いているかとも思います。また大都市圏の倉庫では保管している商品の内容によっては物が動いていると思いますが、地方の営業倉庫はおそらく似たような状況ではないかと思います。
 営業倉庫に長期間商品を預けることのできるメーカーや商店・工場は資金力のある所です。中小零細企業や個人商店で資金のない会社は、建物の空きスペースや軒下にものを置いている所も多いと聞いております。貨物が動かないなか、今後経営状態が悪くなる中小零細企業や商店が続出してくるものと思います。
 表現がいささかオーバーになるかもしれませんが、倉庫はまさに経済情勢を映す鏡なのだど思いながら日々働いています。


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