ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2019年2月5日号 投稿・通信

兵庫県は「日本の縮図」? 
大企業のための「特区」、
一方で荒れる県民経済


縮図となる闘いを模索する日々

兵庫県・仁平 薫

  米中「戦争」、英国の欧州連合(EU)離脱問題(ブレグジット)、ベネズエラ問題、それに全世界が借金まみれとなっていつ破綻してもおかしくない経済など、資本主義社会が大きく音を立てて崩れていく劇的な時代だ。
 だが、私の周りでの日常生活はまるで緊張感がないように見える。つい先日、近所の在日の方と話していた時に、「沖縄の辺野古みたいなことがあれば、韓国やフランスなら若者が国会を包囲するデモの嵐になるはずやのに、日本人は何してんねん」言われ、返す言葉もなかった。
 テレビ番組は相変わらず本当のことを言わない。芸人を使ってテキトーなコメントを垂れ流している。この日常の中に闘いの火ダネはどこにあるのだろうか?
 地元を見回してみると…例えば、兵庫県で世間の耳目を集めたのは、最近では泉・明石市長の暴言問題。明石市は子育て支援で人口が増え有名になった市だが、市長がテンパって職員に「火を付けろ」と言ったとか。ここ一、二年、県内の首長が暴言で辞職に追い込まれることが相次いでいる。三木市では、市発注の建設工事をめぐって虚偽の説明をして辞職、西宮市では新聞記者に「殺すぞ」などといって辞職。明石市の前市長も何年か前に同じようなことをした。首長が「火を付けろ」「殺すぞ」という。前にもあったがこの手が増えているようだ。お隣の大阪では、もっと柄の悪い知事、市長もいるが、これは土地柄ではなくて、それだけ社会が荒れてきている、社会がもたない、行政がもたない、そんな実態のあらわれではないだろうか。
 兵庫県は、よく「日本の縮図」などと言われる。「北は日本海に面し、南は瀬戸内海から淡路島を通って太平洋へと続いている。五つの地域にわかれ、沿海部の大都市、中部の都市での工業地帯から、農山村、離島まで、多様な気候と風土がある」ことが理由だ。北部と南部・臨海部との地域間格差、人口の偏在も大きい。ますます農林漁業が産業として成り立たず、基幹産業であったかつての鉄鋼、機械、電機など大手企業も今や国際競争、技術競争に無残に負けて、沿海部や中部地域でも工場、企業の撤退がだんだん目立つようになった。北部を中心に若者の流出が続く一方で、神戸市の一部地域だけは、国による規制緩和で不動産開発が進んでいる。その矛盾もいずれ表面化するだろうが。
 そんななか、数年前に養父市が農業の「国家戦略特区」に指定されオリックスなどの企業農業の実験場となった。昨年は兵庫県自身が淡路島で悪名高きブラック米企業ウーバーを招き入れタクシー配車予約の実証実験を開始した。県が出す予算のうち三分の一はウーバーに支払われるという。日本でのライドシェア導入につながる蟻(あり)の一穴にされようとしている。
 そこに、環太平洋経済連携協定(TPP)と日欧経済連携協定(EPA)の発効で、海外の安い商品が増えて、肉牛などの農業者や皮革業者は窮地に立たされようとしている。神戸ビーフ、灘五郷の酒造会社などに恩恵があるなどと言われているが、ブランド生産できない肉牛農家は厳しい競争にさらされる。姫路市などの皮革業界は、TPPでアジアから低価格品の輸入が増え、その上、日欧EPAでイタリアなどのブランド品の輸入も増えて立ちゆかなくなる、などなど。
 そして、現代のストレス社会(非正規雇用、低賃金、重労働、借金まみれ)の日常を送っている若者たち。
 さらに荒れていく気配、いたるところに課題がある。生活にかかわる問題に寄り添って、より大きな闘いをしていかなければならないと思う。日本でも韓国や、フランスのように、人びとが立ち上がることはそう遠くないのではないか。
 「日本の縮図」の兵庫県で、縮図となるような闘いをしていきたい。がんばろう。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2019