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労働新聞 2018年11月15日号 投稿・通信

トヨタは生産も組合つぶしも
ナンバー1

フィリピントヨタ労組を支援する
愛知の会・赤川 了一

 皆さんは十八年にも及ぶフィリピントヨタの争議をご存知でしょうか。二〇〇一年、トヨタ自動車の子会社であるフィリピントヨタ社で労働者の過半数が加盟し、団体交渉権を獲得した労働組合との交渉を会社側が一方的に拒否した挙句、二百三十三人の組合員を不当に解雇したのが争議の始まりです。
 労働組合は解雇の撤回を要求してストライキを闘うなど抗議行動を起こしましたが、トヨタ側は御用組合をつくって対抗、暴力ガードマンを使って挑発行為を繰り返してきました。さらには「争議が解決しないならトヨタはフィリピンから撤退するぞ」と当時のアロヨ政権に圧力をかけ、労働雇用省による労働組合承認を撤回させました。さらに組合事務所の近くにテロ行為も行う民間軍事組織を駐留させたため、組合役員は長い期間地下活動を強いられてきました。

現地支援の取り組み
 トヨタの悪らつな組合つぶしは、かれらを支援するカトリック労働者運動の活動家を通じて日本の活動家たちにも伝えられ、トヨタ自動車の本拠地である愛知県内の活動家たちには現地から帰国したばかりのシスターからの支援要請がありました。ただちに関東の労働組合や活動家を軸に「フィリピントヨタ労組を支援する会」が結成され活動を始めました。
 愛知県でも「支援する愛知の会」が結成され、翌年には現地よりフィリピントヨタ労組のエド委員長らを招いて報告集会を開き、かれらと今後の支援活動の進め方を議論しました。私もつたない英語でエドと話しましたが、彼の誠実な対応と資本の抑圧は世界共通であり、階級の怒り、労働者の団結は国境を超えることを実感した瞬間でもありました。
 私たちの支援活動の軸は愛知県豊田市にあるトヨタ本社への抗議・申し入れ行動です。毎年、秋にはエド委員長らフィリピントヨタ労組の代表者と支援者が街宣車を仕立て、労働者の出勤時間に合わせトヨタ本社周辺での宣伝活動を行っています。
 初期の頃は、われわれの抗議行動を警戒して会社を囲むがごとく十メートル置きに守衛、制服警官、人事、組合役員が並び、さらに建物の陰には公安警察らしき輩がウロチョロしている光景が見られたものでした。悪徳企業が国家権力に守られていることを証明する光景でもありました。

ILO勧告さえも無視
 抗議行動に対するトヨタの対応は不誠実そのものでした。フィリピンからわざわざトヨタ本社に訪れているエド委員長らに毎回毎回、下っ端の社員が対応して抗議文も受け取らず、テーブルの上に置いたまま退室するふざけた態度。また、出勤する労働者へのビラ配布には、守衛や人事、組合役員がビラを受け取る労働者にカメラを向けたり、受け取ったビラをはぎ取るなどの悪質な妨害行為を行ってくるのです。知る権利を侵す反民主的な行為が公然と行われているのがトヨタの門前ビラ配布の毎度の光景でもあります。
 フィリピントヨタ労組の訴えを受けて、ILO(国際労働機関)は「フィリピントヨタの解雇は無効」「職場復帰または、相応の適正な保証金を支払え」と三度にわたり勧告していますが、トヨタ側は無視し続けているのです。このようなごう慢な態度は海外に進出する企業として恥ずべきことです。
 また、未解決労働争議の解決を重要政策課題の一つとするドゥトルテ政権の登場により、昨年一月に労働雇用省の主導でILO駐在事務所立ち合いのもとで初めて解決交渉の場が持たれました。しかし、出席したトヨタ側弁護士は「ILO勧告に基づいた話し合いには応じないよう会社から指示されている」と発言し解決を拒否したのです。さらに、四月には労働雇用省のペロ長官から直接トヨタ自動車の内山田会長宛に書簡を送り、争議解決を働きかけましたが、これに対しても二か月近くも放置した挙句、下級社員より「現地のことは知らん!」と回答させる無礼な対応をしています。これが米国の長官からの書簡であったらどう対応したでしょうか?

トヨタにもほころびが
 それでも、フィリピントヨタ労組は十八年間、団結を乱すことなく闘い続けています。こうして長く闘えるのは、運動を工場の中で解決しようとせず、地域でも闘い、世界の労働者に連帯を広げ、政治につなげる活動があったからだと思います。
 私は典型的な大工場で少数派労働運動に関わってきましたが、若い頃、正論を吐く私に周囲の理解は得られず、過激な発言や行動に走りがちでした。その後、地域の活動家集団や地区労役員、地域政治家などと接し、また労働党を知ってから活動の視野も広がり展望が見られるようになったものでした。
 トヨタの不誠実な対応は続いていますが、トヨタにもほころびが出始めています。フィリピントヨタの争議はILO情報、雑誌、新聞、ネットなどで世界中が知り始めています。もうトヨタのごまかしが通用する状況ではありません。
 フィリピントヨタ労組の勝利の日まで支援活動を続けよう!
 労働者の国際連帯万歳!


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