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労働新聞 2018年9月15日号 投稿・通信

現場報告会に参加して思う 
長時間・過重労働がいっそう深刻に


打開の声を組合に結集させ力に

東京・労組組合員 原西 淳二

労基法に風穴が開く
 先の国会で安倍政権が強行成立させた働き方改革関連一括法は、労働基準法や労働契約法、労働者派遣法、雇用対策法など労働関連八法の改悪を一括したもので、十法案を一括改定した安全保障関連一括法と同じ手法だ。国会審議などバカバカしくて聞いてられないと思うのは私だけではないだろう。
 安倍政権は「長時間労働是正に向けた七十年ぶりの労基法改正」などと言うが、実態は「残業規制という岩盤に安倍のドリルで穴を空けた」もので、残業代を払わずに労働者を長時間使いさらに搾り取りたいという企業・財界の要求を法制化したものだ。
 これまで労働組合は「残業代ゼロ法案」と命名し、財界の念願だった労働時間規制の適用除外制度導入にストップをかけてきた。しかし今回の高度プロフェショナル制度(高プロ制)により労基法に風穴が開いたと言える。対象は年収千七十五万円以上の労働者と絞られているが、経団連がその年収基準を四百万円まで下げたいと明言しているように「小さく生んで大きく育てる」魂胆だろう。かつて対象を十三業務として始まった労働者派遣法はその後二十六業務へと拡大、また禁止されていた製造業や医療関連業務まで解禁された。いつものやり方だ。
 今後、三六協定の様式や省令・指針の案など、働き方改革関連法の具体的な詳細は労政審で決められるという。
 三六協定は労働組合や労働者の過半数代表者の合意なしに成立しない建前だ。しかし労働現場の現状を見ると、組合がある職場は大企業と公務員に偏り、多くの労働者が働く中小零細企業では圧倒的に少ない。
 私たち労働者は、法律が時の支配層により思うがままにつくり変えられていることを肝に銘じなければならない。

技術革新で労働過酷に
 それにしても、正社員といっても低賃金・長時間労働で、残業代込みでようやく生活している私たち中小零細企業で働く者にとっては空恐ろしい法律ができてしまったものだ。
 先月、私たちの組合が開いた長時間労働と闘う現場の報告会に参加した。特に運送関係からの報告が多く、輸送労働者たちの長時間で不規則の労働現場の過酷な労働実態が次々に語られていた。
 ある大手運送会社の下請労働者は、面接では「仕事が終わったら何時にでも帰っていい」と言われたが、実際に働き始めると早朝五時に出社すると元請が嫌がる荷物が山のように積まれ、すべての配送を終わらせ会社に戻るのは夜半十一時過ぎになること。しかも燃料費削減のために今夏の酷暑に車内クーラーを使用させないという。体重が瞬く間に八キロも減り、命の危険を感じて組合に駆け込んだそうだ。
 バス会社の組合員たちからは、待ち時間を労働時間と見なさずに細切れシフトを組まれた長時間で不規則な勤務の実態が語られた。会社が休憩時間とする待ち時間に休憩する場所はなく、ワンマン運転のため仕事中に財布や携帯電話の持ち込みを禁止されているため、弁当や飲料を持ち込まなければならないそうだ。さらに家族や組合員との連絡さえ取れない休憩では休憩時間とはいえない、などと組合員が切々と訴えた。挙句の果てに、組合との団体交渉には弁護士が出てきて話しにならないと言う。
 ある生活協同組合で生協組合員の個人宅に注文の品を個別配送する運転手たちの現場では、配送業務がコンピュータで管理されており、一カ所の配送が終わるたびに次の配送先の組合員の自宅に「あと**分で配達に伺います」との連絡が自動配信されるため、まったく休憩時間が取れないそうだ。
 このように、労働者がますますコンピュータに管理され、働く現場の状況は悪化する一方だ。生産力の拡大や技術革新が人びとの生活を良くしたり労働者の過重労働を軽減するために使われず、一握りの資本家たちが儲(もう)けるために使われていることに心底怒りが湧いてくる。

副業・兼業にどう対応?
 こうした報告にあるように、日本の八時間労働制は労働現場において、すでに破壊されている。
 この現状も反映しているのだろう。厚労省が公表した二〇一七年度の過労死等の労災補償状況は、請求件数が二千五百件を超え、認定件数は七百七十三件にもなっている。
 さらに、非正規労働者を中心にダブルワークやトリプルワークで生活を支える労働者が増える中、多くの企業は副業・兼業を禁止してきたが、就業規則で届出制とするなど副業・兼業を容認するように変化している。政府も副業・兼業を推進させる方向だ。
 すでに一つの企業だけで働いていては生活することができない労働者は増えている。これに対し、同一企業内のみの労働時間規制では不十分で、後手になっていると言わざるを得ない。私たち組合の活動や要求にも転換が求められているのではないだろうか。
 組合の中には明るい材料もある。最近、若手の労働者や非正規労働者たちが組合内で発言するようになっている。
 現状を変えたいと職場で団結を求め行動する労働者には未来を変える芽があり、労働組合に結集してこそ未来を変える力となる。このことを忘れず、確信を持って、今後も組合で奮闘しなければと思っている。


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