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労働新聞 2018年9月5日号 投稿・通信

低賃金と違法はびこる労働現場 
とても足りない最低賃金


闘いの芽は必ずある!

熊本県・斎藤 一男

 先日、最低賃金の改定が発表されました。熊本県の改定額は七百六十二円(二十五円増)でした。東京は九百八十五円(二十七円増)、全国平均は八百七十四円(二十六円増)です。「過去最高の引き上げ」と新聞はいっていますが、こんな額の賃金ではとても暮らしていけません。
 また福岡を除く九州各県は全国でも最低レベルで、新卒者や若者が都会に出て行ってしまい、地方の人口減少に拍車をかける要因にもなっています。

ひどい現場ばかり
 私の周りにも、低賃金とひどい職場環境で働いている人が何人もいます。
 ある友人は最近、福祉施設の送迎の運転手に雇われましたが、八時間フルに働いて手取りは月十二万円ほどにしかならないそうです。しかも本来の業務は運転だけのはずなのですが、ゴミに出すペットボトルの処理を延々とやらされたり、個人情報の書類の断裁をハサミでやらされて、このままでは関節がおかしくなると思って自前の小さなシュレッダーを持ち込んで仕事したり、さらには施設に付属している畑の耕耘までやらされそうになったそうです。「黙っていたらなんでも言いつけてくる」と怒っていました。
 またある女性は、施設のまかないの仕事に行っていますが、給料は安いし、ほかの人は時間前から出勤して仕事していたりして、女性も休憩が時間通り取れず、辞めようかどうか悩んでいると言っていました。タイムカードはあるけれど、いつも誰かが勝手に押しているという、とんでもない状況だそうです。
 警備員をしている知人は、少し前まで大工場の守衛をしていましたが、「守衛なんかするもんじゃない」と言っていました。夜間の警備、見回りに加え、工場の環境設備の仕事までさせられていたそうです。ある夜には警報が鳴り、その処理で大変な目に遭ったそうです。「なぜほかの会社の仕事までさせられるのか」と腹を立てていました。
 また別の友人の職場は、鉄鋼関係の工場で吹きさらしの現場で、今年の暑い夏に耐えて働いていますが、仕事が忙しくなって休日まで出勤しているような状況があるにもかかわらず、会社側は「業績が悪い」との名目で例年わずかながら出ていたボーナスもなかったそうです。

劣悪な状況は資料からも
 このように身近でも、悪条件の中で働いている人がたくさんいますが、先日、熊本労働局が発表した資料から、他の状況もわかります。熊本労働局の資料は「二〇一七年の労働基準法等に基づく監督指導の結果」というものです。
 昨年一年の、「監督指導実施事業場数」は三千百四十六事業場、そのうち違反事業場は千八百五十三事業場で、違反率は五八・九%になっています。接客娯楽業で八五・七%、商業で七八・三%、運輸交通業で七六・七%などとなっています。
 また違反事項別の件数を監督指導実施事業場全体に占める割合でみると、「労働時間・休日」が一五・七%、「割増賃金」が一二・一%と一〇%を超え、「労働条件明示」「就業規則」「賃金台帳」がそれぞれ五%前後になっています。
 もちろん、これらは氷山の一角でしょう。何倍ものひどい実態があるだろうことが想像できます。

労働者には力がある
 「ブラック企業」という言葉が聞かれるようになってからずいぶん経ちますが、労働現場はますます悪くなるばかりです。不満はあってもなかなか闘いまでにはならないというのが現実でしょう。
 それでもこの前、知人からわずか数人で労働組合をつくって闘った人の話を聞きました。「運動していく中で、勉強して、労働者がどういうものか分かった」「意地でも、クビになっても負けられんという覚悟だった」と言っていましたが、ぎりぎりまで追い詰められ、バカにされた労働者は強いものだと感じました。
 労働者の現実が良くならない以上、闘いは必ず起こることを信じて、小さくても闘いの芽を見逃さないようにしていきたいです。


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