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労働新聞 2018年8月25日号 投稿・通信

地域で子ども食堂を始めて2年 
苦労してる人の助け合いの場に


心も満す食堂にしたい

埼玉県・前野 良子

 私は自分の住んでいる地域をよくしようといろいろと模索しています。その一つが子ども食堂です。「ごはんを独りで食べなきゃいけないときや、おなかいっぱい食べたい時などに食べに来てくれるといいなぁって『子ども食堂』をつくりました。一人でも兄弟姉妹でも、友だち同士でも! もちろんおうちの人と来てもいいよ! 食べられないものがあっても、時間がかかっても大丈夫! だって、ごはんは楽しくおいしく食べたいからね」…私たちの活動は、こんな文章を載せたチラシを作ることから始まりました。

介護仲間と動き出す
 子ども食堂を始めたきっかけは、介護者支援の活動からのことでした。私は以前、故郷の東北に住んでいる実の母を遠距離介護していました。母を看取った後、今度は同居している義理の父母の介護をするようになりました。周りの人に「五時には家に帰りご飯の支度をしなければいけない」などとぼやきました。それを聞いた人が「介護する人って大変だよね、そうだよね。その大変さを理解してくれることも少ないから介護する人をお互いに励まし合ったりして、支援するっていいよね。」となりました。そんな時ちょうどNPOセンターで介護者支援セミナーがあることを聞き、四、五回のセミナーを受けました。「介護する人が元気じゃないと介護を受ける人も力がでない」ということから介護者支援の会を立ち上げました。
 その仲間が偶然にも同じ地域の人が多く、皆で話し合う中で「介護を受ける側は結構世の中が目を配ってくれ、認知症とかその対処方法とか報道もある。ところが、介護をする方の苦労は日もあたらないし、女性がやるのが当然のように思われている。考えてみると若いお母さんが子どもを育てるのも当然という雰囲気だが、人間やっぱり壊れてくる時もあるよね」というような話の中から、ある人が「子ども食堂をやりたいね」と話しました。その意見に多くの人が賛成して、みんなに声を掛けたら二十人くらい集まり、二年前に開設しました。

親子でホッとしてほしい
 最初に紹介したチラシを千枚近くポスティングすることから活動を始めました。会場探しには少し手間取りましたが、何とか確保することができました。
 食べたい人は誰でも食堂に来てほしいのですが、やはり子育てで苦労している人にニーズがあると考え、子どもをしかる声が聞こえるとその家の近くや団地にポスティングしたり、近くの弁当屋さん、コープや郵便局にチラシを張らせてもらったりしました。また会場となる公民館の前で呼び込みもしました。
 開設から一カ月過ぎた頃、やっと姉妹がもじもじしながらのぞきに来てくれました。始めは二十人分をメドに考えていたのですが、リピーターが多くなり、今は五十人分程度を用意しています。子どもたちは口コミで誘い合って来たり、親子で来てくれているお母さんはチラシを握りしめて、「来るまでちょっとためらっていた」と笑いながらおしゃべりして食べて帰ります。
 会場は地域の公民館です。調理器具が整っているわけでもなく、食器も仲間で持ち寄り、献立も安くて美味しく楽しいものをと考えます。そして毎週一回、夕方五時から七時まで子ども食堂は大賑わいです。
 印象の範囲ですが、母子家庭の人が結構いるように思います。心が疲れているのか、言うことをきかない子どもに厳しく怒るお母さんは家でもこのように子どもたちと向き合っているのだと思います。私たちの「子どもってそんなものだよね」の一言でお母さんはホッとした顔になります。子ども食堂では、子どもに怒らなくていいという雰囲気がとても心地よいということをしみじみと感じています。
 私たちの子ども食堂が、単にご飯を安く食べられるだけではなく、苦労している人たちが助け合い、励まし合うコミュニティ食堂となればと思っています。


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