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労働新聞 2018年7月15日号 投稿・通信

米国発の貿易戦争に不安な日々 
結局最後に犠牲になるのは労働者!


 「希望退職」以外の希望ない会社

栃木県・自動車産業労働者 恩田 雅志

 また労働者のクビが切られるのか、と思う。米国のトランプ大統領が、「自国の安全保障」だか「産業保護だ」とか訳の分からんことをいって、関税を上げるという話だ。中国も負けてなるかと対抗策をぶち上げているし、また欧州などその他の国も保護貿易に走って世界経済が縮小するのだそうだ。
 これまでが本当に景気が良かったのか、オレには実感がない。ただ、会社は人手不足になるからと、パートを募集したり、派遣を増やしたりしていたのも事実だ。それが一転、まずは派遣切り、パート契約の打ち切り(雇い止め)が始まる気がする。
 これまで何度も繰り返されてきたことだ。正社員もうかうかしてはいられない。さらに進むと希望退職の募集、肩たたきだ。
 オレはこの会社に勤めて三十五年になる。地元ではまあまあの規模の工場だったので、入った時には少し夢を持った。
 たが、この間に会社は海外進出を進め、米国、メキシコ、中国と工場を建てるたび、いつの間にかオレたちの仕事が移って、「業績が悪い」とか何とかの理由を付けては仲間が減らされていった。
 会社が協力メーカーから仕事を取り上げた時、オレたちの仕事は少しばかり増えるので、正直言ってちょっとホッとしてしまったこともあるのだが、同時に「そこまでやるのか、アコギなものだな」とも思った。あの居心地の悪さは忘れられない。
 そして、少し景気が良くなると派遣を増やして、パートを募集する。その繰り返しだ。
 オレたちもずっと黙っていたわけではない。希望退職が提案された時には、オレも組合の代議員会に出て反対した。賛同してくれた仲間も多く、一時はひっくり返せると思った。
 だが執行部は「このまま」だと会社が危ない」「一人でも多くの雇用を守る」とかいって切り崩しにかかり、結局は「希望退職」を受け入れてしまった。それから実際に行われたのは「希望」に名を借りた肩たたきだった。肩をたたかれた多くの仲間が仕事と尊厳を奪われて辞めていった。
 パートの雇い止めや派遣切りは「大した問題」にもならず、仕事の閑繁に合わせてごく「普通」に行われている。ちなみにこの間に責任を取って辞めていった経営者や組合幹部は一人もいない。
 こんな夢も「希望退職」以外の希望もなくなってしまった会社だか、かろうじて守っている、あるいは守ろうとしていることが一つある。それは、これらはすべて法の枠内で行なうということだ。
 「偽装請け負い」が問題になると、業務委託(請け負い)を派遣に切り替えた。年金支給ができなくなって六十五歳まで延びると、定年退職者を契約社員で雇用延長させるようにした。どれも背景に法律があり、その向こうには世論がある。
 クビ切りも生活破壊も法律の枠内で行なわれるということだ。だったら、クビ切りできない法律をつくれば良いということか。やっぱり、政治の問題なんだなあと思う。
 だが、気分的にはちょっと違う。もういいかげん嫌になった。オレたちの仕事や生活を左右する連中をぶち倒したい! オレたちのクビを切るやつらのクビを切りたい!!!


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