ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2018年2月5日号 投稿・通信

映画紹介
「ハナ〜奇跡の46日間〜」

  南北統一チームの葛藤と友情描く 「私たちは分断されたままですか?」

 一月初旬の南北高位級会談で、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が韓国・平昌で開かれる冬季五輪に参加することなどで合意された。その後、「統一旗」による入場など、南北関係の発展に向けた努力が続いている。米日韓同盟による朝鮮への包囲が続くなか、韓国の選手や世論の一部に戸惑いがあるのは当然だろうが、あくまで韓国内で解決されればよいことである。
 問題は、日本政府やマスコミが南北対話に敵対し、世論をあおっていることである。
 韓国の李首相は会見で、一九九一年に千葉県で開かれた世界卓球選手権大会の例を引き、「その時の感動を今でも記憶している」と、南北統一チームの意義を語っている。
 この統一チームの実話をベースにしたのが、本作である。
 韓国のヒョン・ジョンファ(ハ・ジウォン)と、朝鮮のリ・プニ(ペ・ドゥナ)はライバル。世界選手権の直前、南北高官級会談の成果を受け、統一チームの結成が決まる。韓国の選手たちは、出場枠が減るため困惑する。南北選手によるホテル生活も、「お国柄」の違いで選手間のケンカまで起きてしまう。互いの実力を知るジョンファとプニは、「最強・中国」に勝利するため、ダブルスのペアを組むことになるが……。
 韓国映画らしく、実話をベースにしつつも娯楽性は十分だ。南北選手間の対立や「ハメ外し」、朝鮮の警護班の実態はフィクションである。実際には、選手は互いに過度の接触を避けるよう「教育」されていたし、朝鮮側警護班の軍における階級は選手よりも下なため、威圧的な態度はとれなかった。
 それでも、ジョンファの「私たちはずっと分断されたままですか? 卓球だけでは『一つ』にはなれないけど、それでもいっしょにプレーしたい」という訴え、プニの「どんなに豊かな国より、私は祖国で暮らしたい」という言葉には胸を打たれずにはいられない。二人の離別のシーンも涙を誘うが、これ以上のネタバレは止めておこう。
 「奇皇后」「シークレット・ガーデン」などで日本でも有名な、ハ・ジウォンの凜(りん)とした演技が光るが、出演はジョンファ本人の希望らしい。
 ここからは実話だ。二〇一二年の映画公開時、ジョンファは韓国卓球団の監督であり、プニは朝鮮障害者協会の幹部であった。韓国では両者を再会させようという署名運動が広がった。ジョンファは自らの著作からの収益の一部をプニに送ろうとしたという。
 映画では描かれていないが、統一チームの結成には、当時の国際卓球連盟会長であった荻村伊智朗氏の尽力があった。荻村氏は、南北両国をそれぞれ十回以上訪れ、説得と準備に当たったという。米国と安倍政権による朝鮮敵視の逆流のなか、対話の動きを支持する勇気ある動きが広がることに期待したい。
 今こそ、見て欲しい映画だ。公式サイトも残っているので、まずは予告編をご覧いただきたい。 (K)

2012年、韓国 http://hana46.jp/


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2018