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労働新聞 2017年10月5日号 投稿・通信

還暦迎え人生を振り返る 
組織を持たない人たちに
何ができるのか

 初心に戻り労働者のため活動したい

福岡県・中村 良夫

 秋の気配を肌身で感じる季節になりましたね。僕は昨年末に還暦を迎えました。六十歳という一つの節目はこれまで歩んで来た道のりを振り返る機会になっています。
 僕は炭鉱労働者の息子として育ちました。最初の仕事は洋食のコックでした。小学生の頃からコックさんになりたいという夢がありました。子どもの頃は洋食を食べたいと思っても値段が高くなかなか食べられませんでした。いつも「貧乏人でも食えるような洋食ができないだろうか」と思っていました。また両親とも働いていたので自分でも飯を作っていましたし、料理が好きでしたので調理師学校にも行きました。
 レストランを経営したいという夢を持って働いていましたが、いざコックになって働くとものすごく徒弟制度が厳しく、働き続けるか悩みました。そういう挫折感があった時期に社会の矛盾に目覚め、いろいろな社会運動に携わる機会を得ました。コックの職場は時間的な拘束が長く、また日曜祭日の休みも皆無でした。活動する時間がなかったので退職しました。
 それからは職を転々としました。トレースの仕事、印刷会社、塗装会社、スーパーなどの職場で勤務してきました。結婚もし二人の子どもも授かりました。

賃金安い清掃の仕事
 そして今は清掃業務を請け負う会社で働いています。現在の職場に勤務した理由は、若い頃に清掃のアルバイトを経験していたので、「体調は悪いが、何とか勤務できるかな」と思っただけですが、いざ働いてみるとあまりにも賃金が安く悩んでいます。時給は七百六十五円ですから月収は十一万円弱です。それから税金を引かれて、手取りは十万円を切ります。生活できるギリギリの給料です。ちなみに自動車通勤の人には交通費手当が出ますが、駐車場代が天引きされ、結局は「交通費手当なし」です。何とか嫁の年金でカバーしていますが、ぜいたくはできません。当然ですよね。
 勤務は朝の七時二十分から夕方の四時二十分までです。七時間四十分の勤務です。休日は月に平均して六〜七日ありますが、当然無給です。また土曜や日曜、祝日は僕の場合は休みではありません。だから平日が休みになるのですが、きちっと何曜日が休みとか何日が休みとは決まっていません。月末にスケジュール調整があった上で、「来月は何日が休みです」ということになるのですが、なかなか私生活上のスケジュールが組めないのが悩みです。
 給料が安く勤務日がバラバラですから、当然にも高齢者が多い職場です。まだ子どもが学校に行っているとか保育園とか幼稚園に行っているという人たちは、家の都合に合わせた働き方をしなければなりません。職員募集にも「時間の相談には乗ります」と記されていますが、なかなか応募がないのが現状です。当然、労働組合もありません。
 現場はいろいろで、学校や病院などに配属されます。仕事の内容は、基本的には床の洗い作業とワックスを塗る仕事、またさまざまなゴミの収集作業などです。時には内勤だけではなく、外回りの仕事もあります。この前は鳥のフンの除去作業もやりました。僕は高所恐怖症なんですが、高いところに上がっての清掃作業などもあります。「勘弁して」と発狂したくなることもあります。また学校で入学式などの行事で使う椅子を並べる仕事も時々あります。清掃には関係ないのでこれには驚きました。かなりの量を少人数で並べなければいけないので大変でした。
 職場には女性も多いです。若い人は二十歳代から、高齢では七十歳を過ぎた方々もいます。
 休憩時間には、若い人はスマホを操作していますし、年配者はひと眠りしています。若い人とはなかなか会話がありませんが、給料はすごく安くて大変だと思います。「よくこんな会社におるな」と声を掛けると、「親と同居しているから何とか生活できます」という声が返ってきました。バリバリ仕事をしている人たちはほとんど独身者です。四十〜五十歳代の人も独身です。だから何とかやっていけているのでしょうね。

働く貧困層のために
 僕が若い頃は、三池闘争の映画会などを地域を回ってやりました。労組を飛び込みで訪ねたりもしました。労組の役員などに会って「三池闘争の映画会をやりますので参加してください」と言ってね。今から思えば「よくもやったな」と思いますが、ぜひとも若い方に今こそ見てもらいたいと思います。労働者が闘った歴史を知ってほしいと思います。そのことの大事さを感じています。
 最近思うことは、資本主義ではもう人民を食わすことができなくなってきているというのが見えます。生活の実感として、つい先日「いざなぎ景気を期間的には超えた」ということが報道されていました。数字上のテクニックとして「景気が良くなっている」と、そういうことが言えるのかもしれませんが、「毎日きついよなあ」というのが多くの国民の実感だと思います。
 今、僕が胸を張って言えることは「社会の底辺にいる」という状態だということです。いわゆるワーキングプアですよね。働いているけれど「生活がきつい」ということ。今の世の中が何とかならないかと思っている人たちが組織を持たない、どうやっていいのか分からないという状態に置かれているのはすごく悔しいです。
 労働組合とかがあるところは、ある意味恵まれているだろうと思います。実際にもっと生活がきつい人たちは組織を持たないし、どうやっていっていいのか分からない。日々生活することで精いっぱいという状況に置かれている、そういう人たちに目を向けてやっていくことが今こそ求められていると思います。
 個人的にもいろいろな経験をしてきましたが、「勝ちたい」ですよね。「勝つために何をすれば」とは分かっているつもりです。年はとりましたがもっと体を動かし、頭を使ってがんばらねばと思っています。
 僕が若い時に、亡くなった親父に「僕は世の中の労働者のために活動する」と宣言した言葉を今も忘れていません。初心を貫いていきます。がんばります!


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