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労働新聞 2017年9月15日号 投稿・通信

立野ダム計画の不備を暗に認めている? 
国主催の現地説明会に参加して

 住民の疑問に答えない国交省

熊本県・ももがわ まゆ

 私は熊本市を流れる白川(一級河川)の流域に住んでいます。二〇一二年の九州北部水害の時には、上流の阿蘇地方に九時間で六百ミリ以上の大雨が降り、白川が広い範囲で氾濫(はんらん)しました。私の自宅前の県道まで水が流れてきて大変な恐怖を感じました。それ以来、大雨の季節には白川の状態が気になります。白川の氾濫が自身の身に迫った問題と考えるようになりました。
 そうした漠然とした不安を抱えているなか、白川上流の阿蘇・立野火口瀬に建設中の立野ダム問題や河川問題についての講演会やシンポジウムが開催に参加するようになりました。ずいぶん以前から立野ダム工事のことは知っていましたが、それほど詳しくは知りませんでした。下流域に暮らす私にも無縁の問題ではないと思い、足を運ぶようになったのです。
 立野ダムは一九六九年に予備調査が着手され、八三年に建設事業が開始されました。高さ九十・幅二百メートルの大きなもので、大雨洪水等による災害防止のための治水ダムということになっています。ダムの下方に三カ所の放流孔が設置され、普段は水を流す流水型です。
 このダム建設計画に対し、流域住民を中心にダムを造らせない運動がずいぶん以前からあり、講演会開催や出版物発行などの啓もう活動、国土交通省や県との話合い交渉など数多くの活動が続けられてきました。住民運動側は、ダムを造ることによる危険性や、立野ダムは造らなくても白川の河川改修工事で氾濫に対応できること、九百七十億円以上もの巨額の事業費、ダム周辺の自然破壊、さらに熊本地震でダム周辺の地形が崩落しているなどが多岐に渡る問題があることを指摘しています。
 一方、国交省は立野ダムについては住民説明会をほとんどしてきませんでした。住民側の公開質問にはいっさい回答しない、とにかく建設する、という姿勢に終始し、ますます住民からの不信を買っている状態です。
 国交省や県はこれではいけないと考えたのでしょうか、今年七月から十二月まで月一回、各回十五人限定で現地で説明会を開催しています。白川流域に住む者を対象にした「白川の復旧・復興対策の現地見学会」というものです。
 今回、それに参加してきました。場所は白川沿川及びダムの工事現場でした。工事現場での説明場面では、住民からダムの欠陥性に対する質問やこれまでの公開質問状に対する回答要求でもめましたが、国交省の態度は説明不十分でかたくななものでした。
 こうしているうちにもダム工事は止むことなく続けられていき、国に対する住民の怒りは増すばかりです。そのことは住民側の結束をさらに強くすると思われます。
 特に感じるのは、質問状への回答拒否などの国側の姿勢はダム計画の不備を認めているのと同じではないか、ということです。それでもダム建設を進めるのは、さらに膨らむ可能性がある九百七十億円もの事業費で誰かが潤うということなのでしょうか。
 今後もこの問題を注視していきたいと思います。


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