労働新聞 2017年7月5日号 投稿・通信
国や自治体は誰のため?
貧しい食事、病院にも行けない生活
働いても容赦ない差し押さえ
愛知県・甲斐 一二三
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私は、税金滞納者です。
先日、テレビで税金滞納者が、高級な車やバイク、貴金属等を税務署や市役所の職員から差し押さえられる場面が放送されていました。普通の労働者から見れば、自分たちは給料から天引きで強制的に払わされているから、税金滞納者は悪人だと思うのは当然かもしれません。おまけにその滞納者が高級車やバイクを数台持っていれば、なおさらその印象は倍増されるでしょう。
私も税金の滞納は良くないことだと思います。特に財産があるのに払わない人は本当に悪人だと思います。ただ、税金滞納者のすべてが悪人だとは思いません。払えない人と払わない人は区別されるべきです。最近の税金滞納者への取り立ては本当に厳しく、まさに時代劇に出てくる年貢の取り立てと同じ様に追い込んでくるのです。督促状や差し押さえの通知も以前よりも早く来て、さらに執行までも早くなっています。
「おかずもご飯」の食事
私は今年から給料を差し押さえられています。正月明けに市役所の職員が会社に来て有無を言わせず手続きをして、毎月九〜十万円も引かれています。それがもう半年続きました。家賃を払うと手元に残る金は五万円ほどです。どんなに残業してがんばって稼いでも、残るのは五万円。
役所は、生活保護の給付額を基準にして、それ以上のものは差し押さえるという考え方のようです。しかし仕事をしていればどうしても電話代、交通費がかかります。結局は食費を切り詰めるしかなく、「ごはんのおかずは、ご飯」で食事しているだけ。今年は、味の付いたものをほとんど食べていません。仕事もしていて一定の収入があるのに、なぜか食事もままならない極貧の生活。
この生活のすべてはリーマン・ショックから始まっています。大企業の使い勝手のよい悪法である派遣法の下で働かされ、その後の無慈悲な派遣切りに遭い、その影響が未だに後遺症として残っているのです。その時に知り合った仲間もほとんど同じ境遇です。
あの二年間の中で税金を滞納、結局仕事が続けられず不安定となって、生活基盤がダメージを負ったのだと思います。
保険払っても病院に行けず
本当に弱者が救われる社会保障のためなら、どんなに苦労しても税金を払うこともまだ納得できます。しかし日本の社会保障は弱者を救うものではないです。
国は、医療費や生活保護費が増えると、税金滞納者と同じ様に、マスコミを使い不正受給や軽症の患者の病院占拠のような場面を報道して国民感情をあおり、予算を減少させたり、受給額を減らしたりします。
その一方、ゼネコンやメガバンク、金持ちには、税金を使ってさまざまな優遇策が行われています。震災復興もゼネコンが食い物にしています。地域振興券やふるさと納税、節税対策もそうですよね。
だいたい、私も含めて多くの低所得者には、保険料を払っていても病院には行けない現実があります。実際、私は今年に入ってから病院にかかりたかったことが三回ありました。外科に心療内科、最近もあばら骨を痛めて今も痛みますが、蓄えもなくもう病院には行けません。
おそらく、多くの低所得者は私と同じだと思います。病気になっても気力で働いて、病院へは行けないのが大半だと思います。病院に行くとすれば大病になってから行くしかないかもしれません。
日本の社会保障は、お風呂と同じように、上の方は温かく適温だけど、下に行くほど冷たくて低温になっています。本来、社会保障は弱者を救うものでなければいけないはずです。低所得者でも安心して暮らせなければいけません。
低所得者の本当の叫びを
今夜も「ごはんのおかずはご飯」でさびしい夕食。テレビでは茶番劇的な都議選を流しています。またたくさんの国民がダマされているみたいですね。この際、国会議員や地方議員の何人かを低所得者の中から選び出して欲しいですね。今の選挙制度ではカネがかかって出られませんから。少しは低所得者の本当の叫びが聞きたいです。
しょせん誰も助けてはくれない。資本主義の現実のなかで、みんな投げ捨てたい気持ちになります。しかし投げ捨てて帰れる場所も私にはありません。
貧困を、政府や金持ちたちは「努力不足」の言葉で片付けてしまいます。金持ちの、金持ちによる、金持ちのための政治が日本や資本主義諸国の真の姿だと思います。
この混とんとした日本の現状を変えることができるのは、増加傾向にある貧困層、低所得者層です。立ち上がり行動する時だと思います。
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