労働新聞 2004年12月5日号 通信・投稿

BSE、鳥インフルエンザ、野菜高騰
四苦八苦の零細食品業界
仲間との意思疎通が大切

食品卸業労働者 伊東 孝三

俺の給料明細書

基本給122,500
調整給122,500
交通費15,750
合 計260,750

控除額
社会保険他44,724
合 計44,724
手取り 216,026円 


手取り20万円、時間外手当なし

 基本給12万2500円、調整給12万2500円、交通費1万5750円、支給合計26万750円。時間外手当、扶養家族手当、住宅手当などはなく入社以来この金額はまったく変わっていません。厚生年金、健康保険、雇用保険、所得税、住民税が引かれて手取りは21万6026円。交通費を除くと手取り20万円です。
 ハローワークで職を探し、何社も何社も面接を受けて、やっと見つけた社員数人の零細企業で働き始めて4年。業務用の冷凍加工食品の卸業で、社員食堂やレストラン、小さな個人経営の食堂まで配送先は実にさまざま。8時の出勤、約1時間の積み込み作業、それから首都圏の配送作業が始まります。夕方5時から6時ごろの帰社。交通事情によってはさらに遅くなります。
 それから伝票整理、現金取引の金額の確認などの事務作業、退社は7時近くになります。早く配送が終わる水曜日や土曜日は翌日の注文の仕分け作業が待っています。時間外手当などの要求を社長にしたこともありますが、「のれんにウデ押し」の社長で話になりません。
 社長のことを考えると、親会社からの出向社員のようなもので、何の権限もないようで、親会社に言われるままです。社長は、昨年5万円、今年5万円、給料を下げられたようで、額面40万円になっています。零細企業の社長の哀れささえ見えてきます。社長に経営の立て直しについて相談を持ちかけても、これまたのれんにウデ押し。何を言っても話にならない社長です。

不満あっても解決策見えず

 私は扶養家族がいませんので、この手取りで切り詰めて切り詰めて、何とかやっていますが、扶養家族が2人いる会社の若者にとっては厳しい金額です(若者は私より手取りが少ない)。
 この若者、転職しようと都の食肉解体の仕事を受験したのですが5人の募集に200人が殺到したそうで、やっぱりダメでした。市の清掃業務の受験もしたことがあるそうで、その時は100人の募集に5000人が応募してきたといっています。
 給料に不満はあっても代わりの仕事が見つからないのが現実です。労働組合をつくって闘おうという話も雑談の中で出てきますが、赤字経営の続く会社でどうするか、見通しがつかないので労組結成の決断まで至っていません。ちなみに社長の勤務時間は、通常は朝5時ごろから夜7時ごろ、時に朝3時ごろから仕事をしているようです。
 深刻な不況の中で日々の経営に四苦八苦している店が多いものですから、売り上げは伸びず、納品先は単価の切り下げを何度も要求してきます。それに同業者との競争もあります。
  最近、わが社に卸している冷凍加工食品の卸業者が、わが社の月の買取金額が少ないとの理由で、取引の停止を通告してきました。わが社はまた別の業者を探して取引をしています。
 その結果、仕入れ価格が上がり、ますます厳しくなってきています。牛海綿状脳症(BSE)や鳥インフルエンザ、野菜の高騰など、食に関する影響は、小さな零細企業には大きな問題となって跳ね返っています。いざという時に闘えるように、しばらくは社員数人の意思疎通はしっかり持ちながら、会社がどうなるのか見守っている状況です。


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