労働新聞 2004年11月15日号 通信・投稿
新潟県中越地震
魚沼コシヒカリも出荷できず
生活と地域経済に大打撃
新潟県十日町市「ゆいの里」
代表・飯塚茂夫さんに聞く
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■農地、貯水池に亀裂
家の被害状況は壁にヒビが入ったり、タンスが倒れたり、食器棚の食器が落ちて割れたりしましたが、被害は少なかったほうです。
私は農業をやっていますが、農地や田圃のあぜ道、貯水池に亀裂が入ったり、農道の崩落、土砂崩れなどがけっこうあります。水田や農道の亀裂は来春の作付けに影響が出ます。春になって雪が消えると同時に農作業が始まりますので、早く修繕する必要があります。
もう初雪があっても不思議でない時期です。根雪になると復旧工事に手がつけられなくなります。最近はあまり降らなくなったほうですが、このあたりは豪雪地帯ですので2〜3メートルは積もります。時間が非常に限られているので、復旧工事は急がなければ間に合いません。
■出荷前のキノコが全滅
地域経済への打撃は深刻です。近くにはスキー場がありますが、キャンセルが相次いでいます。観光産業は打撃が大きいです。
町ではキノコ産業が盛んです。エノキダケの栽培農家が多いんですが、ちょうど出荷の時期を迎えていました。出荷できるばかりになっていたキノコが全部棚から落ちたり、傾いたりして商品にならない。それを片づけて新たに植え付けると、商品になるまでに50日から60日かかる。鍋物の需要の多い年内出荷には間に合わない。その間、収入が入らないし、壊れた施設を修理しなければならない。かなり経営が苦しくなるので、融資を受けなければやっていけません。
ここはブランド米「魚沼コシヒカリ」の産地です。コメ倉庫に収穫したコメを高く積んでいるんですが、地震によってそれが崩れて紙袋が破れ、手がつけられない状況です。積み直したいと思っても余震があって危険で倉庫の中で作業ができず、せっかくの新米を出荷できない状況です。
また、地場産業の織物工場も被害も受けていますし、災害復旧に時間がかかっていますので、生産が停滞しています。織物産業は不況産業ですが、それに追い打ちをかける厳しい状況です。
■生活道路の復旧は急務
災害復旧工事は最低でも生活道路とインフラは早急に取り組んでほしい。水道、下水はほとんど復旧しましたが、生活道路の復旧は時間もお金もかかり、遅れています。この地域は雪国ですので除雪もしなければならず、道路は短期間に復旧しないと、孤立集落もさらに出てくる。
国や県に対する要望としては、迅速に災害復旧の予算の手当をして地方に下ろしていただきたい。「三位一体」改革で厳しい状況ですが、災害というのは特別なことですので、特例としてやっていただきたい。地方自治体の財政も非常に厳しいので、これはなんとしても国や県にやっていただかないと。十日町では仮設住宅を220戸つくる予定です。
■今も車で生活する人も
山古志村、小千谷市、川口町は震源地にいちばん近いところですから、被害が大きい。住む家がない方もおられます。避難命令が出ているところもあります。川口町では今も車で暮らしている人もいます。
阪神大震災を上回る震度でありながら、犠牲を最小限に抑えたのは、豪雪地帯であったために家屋が頑丈にできていたことがあると思います。犠牲者は最小限でしたが、エコノミークラス症候群という形で亡くなった方もいます。
余震が続いているのがいちばんの不安要素です。今までの地震というのは1回ガツンとくると後はそれほどなかったと思うんですが、20日もたっているのにいまだに強い余震がある。夜中に寝ていても目が覚めます。
山間部は過疎地で高齢者が多い。高齢者の皆さんはこの震災をきっかけとして、息子さんが住んでいる平場に出ていく可能性があります。そうなると過疎化に拍車がかかる。若い人がいる家でも、家が全壊とか半壊の場合には、平場に出るということも考えられる。山古志村などは非常に深刻だと思います。復旧した段階でどのくらい戻られるのか、非常に気になるところです。
■ボランティアに勇気
ボランティアや救援物資はたいへんありがたい。ボランティアは若い人が多いですが、中にはリタイアされた方とか働き盛りの方もいます。
報道で知って、なんとか助けたい、役に立ちたいという気持ちで来ていただいています。そういう気持ちがとてもうれしい。休日には500人ぐらいが来てくれます。その光景を見るだけでも、たいへん勇気づけられています。
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