労働新聞 2004年10月5日号 通信・投稿

36協定違反は日常茶飯事

サービス残業はもうゴメン
労基署の是正勧告が波紋呼ぶ

流通労働者 奥村 恵子

 先日、私が働く会社の事業所に、労働基準監督署が立ち入り調査に入った。調査の結果、サービス残業の事実が明らかになり、「是正勧告」が出された。この営業所は事業拡大にともなって新しく立ち上げた事業所で、事業開始に当たってのトラブルが発生し、ここ数カ月、残業がきわめて多かった。
 会社側はサービス残業分の割増賃金の支払いに応じたが、この事件が大きな波紋を呼んでいる。まず、だれが基準監督署に訴えたのかということが問題となった。監督署は定期検査の一環だと言っているが、そんなことを信じる人はいない。対象となった4人の正社員の1人だろうと、だれもがうわさし合っている。会社側は告発した人を特定する気はないというが、勇気を出して告発した人は、そういう視線にもさらされることになった。会社側に否があるのに、告発した人が非難の目で見られるというのはおかしいと思う。
 私の職場は人手不足が深刻で、そのうえ正社員は少ない。派遣労働者とパート労働者が8割を占める構造になっている。現場で働く正社員には、大きな負担がのしかかり、定時で帰りたくても帰れない状況がふつうになっている。
 リストラが進む一方で、新事業所が増設される職場では、長時間労働は全社に及んでいる。だから、36協定(時間外労働に関する労使協定)違反は日常茶飯事だ。
 36協定では1カ月30時間、上限45時間、年間360時間となっている。しかし、実際はこの限度時間を超えての残業が強いられ、時間外労働が月100時間を超えるケースも出ている。その上に、サービス残業だ。労働組合はあるが、会社の違法行為を正して、真剣に改善を迫っていこうという姿勢は見られない。
 残業をする時は、建前としては上司から残業指示を受けることになるが、現状ではいちいち指示を受けることはなく、事後に残業指示書を自分で書いて上司の印鑑をもらっている。残業時間はこの指示書に基づいて計算されるが、この指示書段階で残業時間が調整され、サービス残業にされてしまう場合もあるので、要注意だ。
 労働基準監督署は、指示書による残業時間とタイムカードで算出した残業時間とが合っていないことを指摘し、サービス残業分について割増賃金を適正に払うように勧告した。しかし、労基署の勧告は当該事業所に限られ、全体に問題があることを知りながらも徹底した追及はされないという、お役所仕事に終わった。
 会社も全社員を対象にすれば、多額の割増賃金を支払わなければならないので、その事業所の特殊な事例として片づけてしまった。その結果、割増賃金を受け取ったのは調査の入った事業所の4人だけに限られたことに、みんなの不満が高まっている。だれだってサービス残業=ただ働きはもうゴメンだ。労働組合はサービス残業をなくすために、本腰を入れて人員増を要求すべきだ。
 職場では新人事制度の導入などもあり、人事評価をめぐって人間関係がギスギスしてきている。こうした中で、うつ病になって長期休暇をよぎなくされた人も数人出ている。働く仲間が団結できる雰囲気を、職場につくっていきたいと思う。


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