労働新聞 2004年9月15日号 通信・投稿

生徒巻き込む騒動2話
これが県財政の健全化?

県民負担で「まごころ国体」
選手宿泊で地元は大わらわ

埼玉・中学校教員 吉野 博之

国体に動員される生徒たち

 埼玉県の話題その1。
 「彩の国まごころ国体」の夏季大会が9月10日に開幕しました。開催前から多くの県民がボランティアとしてかり出され、町や会場の掃除から花の準備、大会の運営までを担っています。全国から6000人の選手団が参加するようですが、宿泊施設が足りず、民家を宿泊場所として提供させられた人もいます。
 これが「お金をかけず質素にお迎えする」を大会スローガンに掲げた国体の中身です。ただし、県は「天皇杯至上主義はとらない」としながらも、これまで、選手育成に2年間の準備期、4年間の育成期を設け、計20億4700万円を出費してきました。県は、批判をかわすためか「高知県よりも少ない」と盛んに強調しています。
 生徒たちも大会に動員されます。競技は県内各地で行われますが、その競技会場がある地域の学校の生徒が観客として動員されるのです。
 校長から話があった時、私は、何か大会のお手伝いをするのかなと思って聞いていました。ところが校長の説明は「人気のある競技はよいが、そうでない競技には観客が少ない。だから生徒に観客になってもらうんです」と。しかも、この「観戦」の3日〜4日間分を事前に夏休みから削るというのです。
 私は開いた口がふさがりませんでした。生徒は夏休みを減らされた上に、見たくもない競技に強制的にかり出されるのです。そしてマスコミには「多くの子供たちが熱心に観戦していました」と報道されるのです。国体よ、クソクラエ。

タワー誘致のため署名を強要

 埼玉県の話題その2。
 埼玉県のもう1つの話題は、第2の東京タワーの建設です。
 今マスコミで騒がれているNHKが持ちかけ、県が音頭をとって電波受信のタワーを建設するというものです。池袋などでも誘致に名乗りをあげているため、県は、何としても埼玉にと「県民大連合」をつくりました。大連合といっても、呼びかけに名を連ねているのは県の役人と銀行、経済界のトップだけです。
 県は、誘致のための署名を県民に呼びかけていますが、これがすさまじい。図書館などの公共施設はもとより、各学校にまで署名用紙が配られています。しかも、この署名用紙には「タワー誘致の署名」としか書かれていず、他に何の説明もないのです。
 私は、この署名用紙に「反対」と書きました。さっそく校長に呼ばれました。「なぜ反対なのか」と。私は「何の説明もなく、中身が分からない。これでは署名するわけにはいかないし、生徒にも説明ができない」と言いました。じやー説明するとでも言うかと思ったら、校長いわく「世の中にはいろんな署名があるだろう、それと同じだ」と。私はまたまたあ然。こんな調子で各学校でやられているとしたらあまりにも無責任ではないか。
 タワー建設には少なくとも1000億円がかかると言われています。財政の健全化と称して県知事は、図書館や福祉施設など公共施設の民間委託を打ち出しています。最近では県立高校の民間委託まで言い出しました。そんな中でタワー建設を言い、ばく大なお金を注ぎ込もうというのです。生徒に署名させるというなら教師にきちんと説明するのが、最低限必要なことではないでしょうか。
 県知事は、タワーを埼玉県の新たな観光のシンボルにしたいとも言っています。ハマ(横浜)の観光シンボルであったマリンタワーが赤字続きで身売りされると伝えられていますよ。埼玉は大丈夫?


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