労働新聞 2004年9月15日号 通信・投稿
ひどすぎる米国精肉事情
エリック・シュローサー氏の
インタビュー紹介
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「米牛肉輸入再開へ」…先日、政府の食品安全委員会が、20カ月齢以下の牛から牛海綿状脳症(BSE)の病原体を検出することは困難との見解を正式にまとめたことを、各紙が報道した。
誰がどう考えても、本当にひどい話である。
政府関係者は「日本の現行の全頭検査は、いずれ見直しが必要だった」などとヌケヌケと話しているが、日本国内のBSE検査体制を緩和し、窓口を広くして米国牛の輸入再開に道を開く…米国に屈服している日本政府が描いた、そんなシナリオに沿った一場面であることは見え見えだ。
新聞もひどいものだ。米国牛の輸入を再開する前には、検査体制の変更と牛肉の安全性に関する国民・消費者の理解が必要だ。何より、日本の基準に即した米国の牛生産体制や精肉体制、検査体制が整わなければならない。高いハードルがいくつもあるのに、御用マスコミは「輸入再開」が既成事実であるかのように国民に宣伝している。
しかし、そのハードルを、米国はまたしても「下げよ」と居丈高に要求してきている。大統領選挙を直前に控えたブッシュは自国の選挙民(精肉業者)に「(日本がまとめた20カ月齢ではなく)24カ月齢以下を除外対象にするよう、日本に要求する」などと約束しているという。輸入再開のため、日本国民がリスクを負えということだ。ふざけるのもいい加減にしろ!
このようなごう慢で危険きわまりない米国の姿勢を裏付けるものを紹介しよう。
少し前の話になるが、文藝春秋の今年3月号に「米国牛を食べてはいけない 狂牛病取材の第1人者が暴く米国牛の『汚染度』」という記事が載った。米国ジャーナリストのエリック・シュローサー氏をインタビューした記事だ。
氏は、米国食肉業界の内幕を暴いたベストセラー『ファストフードが世界を食いつくす』の著者である(本紙7月25日号に関連記事)。氏は、3年前に日本で初めてBSE感染牛が発見された当時から、米国牛のBSE感染リスクを訴えていたという。
記事の中で、まず氏は米国の牛肉市場のでたらめぶりを厳しく指摘している。
昨年の米国のBSE検査頭数は、2万頭と、1億頭以上いると言われている全体の0.05%しか検査をしていないという。「と言われている」というのがミソで、米国農務省は、自国にどれくら肉牛が飼われていて、どのような経路で流通をしていのか、まるで把握していないという。
しがたって、昨年末にBSE感染牛が発見された後、その後その感染牛の年齢や処理方法などについて発表が二転三転したことを「あの農務省なら当然」と切り捨てる。
さらに、こうしたひどい食肉事情にも関わらず、ブッシュ大統領と巨大精肉業者が結びつき、むしろ状況を悪化させていることや、そのことを米国民に隠しごまかすために、御用マスコミなどを使ってデタラメな情報をふりまいて米国民をだましていることなどを暴露している。
印象に残ったことは、BSEの感染原因となっているプリオンの発見でノーベル賞を受賞したスタンレー・プルシナー氏がたびたび政府に検査の強化を訴えていたにも関わらず、ブッシュはことごとくそれをはねのけていたというエピソード。
また、前述の検査体制の現状があるにもかかららず、食肉業界は業界のホームページに「米国では政府と畜産業界がお互いに連携し、何重にも厳しい審査をクリアした牛だけを提供している」などとヌケヌケと説明していること。
さらに、費用のかかる検査を、中小精肉業者にだけ厳しく課し、大企業にはザルのような状況が横行していること。
氏は、精肉業界と大統領や与党とのゆ着など、背景的な暴露をしているが、この米国の危険性を示す具体的事実は、日々次々と明らかになり、マスコミなどでも報道されているところである。
自国の大企業の利益を最優先させる米国に、日本の国民が安心して食べられる安全な牛肉を提供することはできない。こんな米国の要求に、日本政府が応じることは、まったくもって許されない。
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